母銀河から離れたところに超新星

著者 :山岡均(九大理)

超新星は星が死ぬときの大爆発ですから、星が多く存在する、銀河の腕や中心部で発生することがほとんどです。しかし、星がそれほど多くない銀河辺縁部でも、超新星が起きることがあります。今回、山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんが発見された天体は、まさにその一例です。

板垣さんは、8月20.696日(世界時、以下同様)に撮影した画像で、17.6等の新しい天体に気付きました。翌21.777日に確認したときにも明るさは変わっていませんでした。天体の位置は、

赤経   2時49分10.81秒
赤緯 -14度26分59.8秒 (2000年分点)

で、くじら座とエリダヌス座の境界付近(エリダヌス座側)にあるレンズ状銀河NGC 1120の中心から、東に97秒角、北に65秒角離れた位置にあたります。天体は、宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさとおる)さんによって確認されました。

新天体がNGC 1120に属しているものだとすると、銀河中心からの距離は67kpc以上になります。私たちの銀河系では、小マゼラン銀河よりも遠くの距離にあたります。写真に写っている銀河の広がりより、かなり遠いところです。そのためか、最初の広報では、この天体は「超新星らしい天体」として報じられました。一方、新天体がこの銀河に属するものと考えると、発見時の絶対等級は-17.7等ほどになります。星生成が不活発なレンズ状銀河、しかもその辺縁部での出現ですから、寿命の短い大質量星起源の重力崩壊型超新星であるとは考えにくく、核爆発型超新星の可能性が高いと思われますが、その極大にしてはやや暗いところです。ただし、星生成が不活発なところで出現した核爆発型超新星は、活発なところで発生したものに比べて暗いという研究もあり、それとは話が合います。

8月29.13日になって、イタリアのグループが新天体の分光観測を行ない、天体がこの銀河の距離にある核爆発型(Ia型)超新星であることが判明しました。これを受けて、天体は「超新星2010he」と呼ばれることになりました。このように、天体の発見とその公表・命名には、細心の注意と労力が払われているのです。

板垣さんの発見画像 http://www.k-itagaki.jp/images/psn-1120.jpg
遊佐さんの確認画像 http://space.geocities.jp/yusastar/PSNinN1120_100821.htm

参考文献:

2010年8月31日

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