ぺガスス座で明るい新矮新星が増光

著者 :山岡均(九大理)

夜半過ぎに昇ってくるぺガスス座で、8等台のやや明るい新天体が見つかりました。連星系内の白色矮星に落ちるガスの円盤が急激に明るくなる「矮新星」の一種で、数年に1度程度しか明るくならない種類のものではないかと推定されています。発見したのは、韓国の李大岩(イ・デアム、Dae-am Yi)さんで、昨年には彗星C/2009 F6 (Yi-SWAN)を発見された活発な天体捜索家です。また、静岡県掛川市の金子静夫(かねこ しずお)さんも、この矮新星を独立に発見し ています。

李さんは、5月6.77日(世界時、以下同様)に一眼デジタルカメラに93mmレンズを用いて撮影した2枚の画像に、10.8等級の見かけない天体を見つけて報告しました。翌7.76日に李さんが400mm望遠レンズを用いて撮影した確認画像では、この天体は8.4等まで明るくなっていました。また、金子さんは7.787日に80mmレンズで撮影した画像でこの天体(明るさ9等ほど)に気付きました。山形県山形市の板垣公一(いたがき こういち)さんが、8.657日に60cm望遠鏡を用いて撮影した画像(天体は8.8等ほど)で測定した天体の位置は、

赤経  21時38分06.66秒
赤緯 +26度19分57.1秒  (2000年分点)

でした。

この位置には、15等ほどの暗い星がありました。板垣さんが5月1.71日に撮影した画像でも15等ほどで見えており、そのときにはまだ増光は始まっていなかったことになります。また、この暗い星は天球上の動きである固有運動が大きいこともわかり、私たちにかなり近いところにある天体であると推定されます。さらに、この天体は以前からやや強いX線を放っていることもわかりました。天体の色も考え合わせると、どうやらこの天体は、連星系内の白色矮星に落ちるガスの円盤が急激に明るくなる「矮新星」の一種であろうと考えられま す。

そして、分光観測の特徴や、0.1等級程度の明るさの短時間変動が報告され、この天体はどうやら、矮新星のなかでも、数年に1度ほどしか増光しない、希少なものであることがわかってきました。今後、数週間程度はこの天体は増光状態にあると思われ、詳細な観測から、この天体の素姓が明らかになっていくことが期待されます。

参考文献:

2010年5月9日

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