ひとつの銀河で超新星が出現する割合は50〜100年に1個程度と考えられていますが、必ずしも同じペースで出現するわけではなく、銀河の種類などによって異なります。ほんの数年の間に複数の超新星が出現することもあれば、私たちの銀河系のように何百年も観測されないこともあるのです。
山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんは、12月19.45日(世界時、以下同様)に60cm反射望遠鏡を用いて撮影したCCD画像上で、15.9等の明るさで写っている新天体に気付きました。新天体の位置は、
赤経: 18時19分51.91秒 赤緯:+74度33分55.0秒 (2000年分点)
で、りゅう座の渦巻銀河NGC 6643の中心核から東に23秒角、南に11秒角ほどのところです。この天体は、翌20.347日にも板垣さんによって確認され、15.7等とやや明るくなっていました。埼玉県上尾市の門田健一(かとだけんいち)さん、ロシアのカザン州立大学のグループも天体を確認しています。一方、板垣さん自身が12月16日に撮影した画像には、19等よりも明るい天体は写っていなかったことから爆発直後の発見だと考えられます。
NGC 6643は今年3月に重力崩壊型の超新星2008boが観測されたばかりの銀河で、1年も経たないうちに今回の超新星2008ijが出現したことになります。今年は、IC 2522銀河に超新星2008brと超新星2008coが、また昨年末と年頭になりますがNGC 2770銀河に超新星2007uyと超新星2008Dが観測されています。今回の超新星2008ijはどのような超新星なのか、今後の分光タイプ決定や電波・X線などによる観測、そして光度変化の追跡が待たれます。
参考文献:
- CBET 1626 (2008 Dec. 20)
2008年12月21日
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