冬の到来を告げる立冬も過ぎ、夜の長い季節になりました。夜長を活用して長時間の天体観測が可能ですが、悪天候に悩まされる地域もあることでしょう。超新星ハンターとして知られる板垣公一(いたがきこういち)さんがお住いの山形は、冬は雪雲に覆われてしまうところで、冬の観測は困難です。冬本番を前にした今月、板垣さんは超新星2008gzを発見されました。この発見によって板垣さんの超新星発見数(独立発見を含む)は通算41個となり、その活躍ぶりはとどまるところを知りません。
板垣さんは、11月5.831日(世界時、以下同様)に60cm反射望遠鏡を用いて撮影した画像から、16.2等の新しい天体を見つけました。新天体の位置は、
赤経: 11時25分 3.24秒 赤緯:- 9度47分51.0秒 (2000年分点)
で、コップ座の渦巻銀河NGC 3672の中心核から南に7秒角、東に13秒角ほどのところにあたります。オーストラリアのパース天文台で行なわれている超新星捜索プログラムでも、この超新星を独立に発見しています(7.841日、15.5等)。
母銀河までの距離は7300万光年ほどで、この距離に出現した超新星としては発見時の明るさは暗いのですが、この方向はつい最近まで太陽に近くて観測を行なえなかったため、爆発から間もない超新星なのか、それとも時間が経って暗くなったものなのかはわかっていません(板垣さんの観測とパース天文台での観測とでは観測波長や比較星が異なるので、報告された明るさを単純に比べることはできません)。この銀河には昨年、超新星2007bmが発見されています。星間吸収のために暗くなっていましたが、それでもこの超新星は14等ほどに達しました。今回の超新星についても、今後のスペクトル観測や光度変化の追跡から、詳しい情報を得られることが待たれます。
参考文献:
- CBET 1566 (2008 Nov 10)
2008年11月10日