わし座に、14等級の新星らしき天体が発見されました。天体と私たちとの間にある星間物質によって光が吸収されたために、たいへん暗く見えているものと推定されます。私たちの銀河系内の新星で、これほど暗い状態で発見されたのはたいへん異例です。
天体を発見したのは、数々の超新星を発見してきたことで広く知られている、山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんです。最近では、より広い視野を捜索することで、矮新星という種類の変光星の発見や、ジャコビニ彗星の再発見なども成し遂げています。板垣さんは、9月22.554日(世界時、以下同様)に21cm望遠鏡で撮影した広視野の画像で新しい天体に気付きました。約44分後の22.585日に、60cm望遠鏡を使って撮影した画像から測定した天体の位置は、
赤経 19時06分28.58秒 赤緯 +7度06分44.3秒 (2000年分点)
でした。天体の明るさは、フィルターなしのCCD画像では14.0等ほどでした。以前の可視光領域で撮影された画像では、この位置には天体は見当たりませんが、近赤外線波長での天体カタログ2MASSには、たいへん暗い天体があり、これが増光したものと思われます。
茨城県つくば市の清田誠一郎(きよたせいいちろう)さんや、三重県の中島和宏(なかじまかずひろ)さんが、24日にフィルターを用いてこの天体を撮影したところ、赤色の波長(Rc)では16等ほどでかろうじて検出、赤外域(Ic)ではかなり明るかった一方、黄色の波長(V)などでは天体は見えませんでした。また、カナダのグループや岡山県井原市の美星天文台による分光観測でも、赤い波長より短い波長の光はほとんど見られず、長波長側でのみ光が検出されています。これは、星間物質による減光では、波長の短い光がより多く吸収されることと合致します。また、分光観測では、水素の幅の広い輝線が見られ、天体が爆発的に膨張していることがわかりました。おそらく新星であろうと思われますが、今後の追跡が重要です。
銀河系内の新星で、これほど暗い状態で発見されたのはたいへん異例です。この種の天体がこれまで見逃されてきたのか、それともたいへんまれなものなのか、今後の研究課題となることでしょう。
参考文献:
- CBET 1512 (2008 Sept 24)
2008年9月26日