はくちょう座と言えば夏の大三角形の一角を占める星座ですが、やや北にあるために、今の季節でも夜半以降はじゅうぶん観測の対象となります。そのはくちょう座に、3月に引続き、本年2個目の新星が発見されました。発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのグループです。彼らは、系外銀河で新星を数多く発見してきましたが、私たちの銀河系での新星発見は初めてになります。
新星らしき天体は、4月10.728日(世界時、以下同様)に撮影されたCCD画像上で7.7等の明るさで発見されました。40cm望遠鏡を用いて当日および翌日撮影した画像で測定された位置は、
赤経 19時43分01.96秒 赤緯 +32度19分13.8秒 (2000年分点)
です。この間に天体は0.6等ほど増光しており、また独立発見を報告した中国のグループからは、8.831日には14等より明るい天体は見えなかったとの指摘もあることから、この天体は増光をはじめてからまだ2-3日しか経っていない、「新鮮な」天体であることがわかります。
埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんは、増光前には1秒角以内の近い位置に16等前後の星があったことが指摘しており、この天体が増光したのなら、9等級、すなわち4千倍近い増光をしたことになります。増光前の天体は、水素輝線を出している、割に特殊な星であることも指摘されています。今回の増光天体には、「はくちょう座V2491」という変光星符号が振られました。
天体の分光観測が、岡山県井原市にある美星天文台で、同台台長の綾仁一哉(あやにかずや)さんと大阪教育大の松本桂(まつもとかつら)さんによって行なわれ(11.72日)、爆発天体特有の形をした幅広い水素輝線を示していることから、この天体は爆発後間もない古典新星であることが明らかになっています。変光星名が付いた後に新星であることが判明したので、「2008年はくちょう座第2新星」という呼び方は公式には使われませんが、通称としてはこの呼び名が使われることもあるかもしれません。
もしもう少し明るくなれば、肉眼でも認められる明るさになります。今後の明るさの変化には注意したいところです。
参考文献:
- IAUC 8934 (2008 Apr. 11)
- CBET 1334 (2008 Apr. 11)
2008年4月12日