銀河系内の新星は、年間数個程度が発見されますが、北半球での新星発見は、そのほとんどが日本のアマチュア天文家によるものです。今回のはくちょう座の新星も、熱心な天体捜索者である西村栄男(にしむらひでお)さんによって発見されました。西村さんは、昨年も新星を3つ発見(うちひとつは独立発見)されたたいへん活発な捜索者です。
西村さんは、4月2.807日(世界時、以下同様)に撮影した写真上に、10.5等の新しい天体を見いだしました。3月28日に氏が撮影した写真では、12.0等より明 るい天体は見当たりません。発見の報告を受けて、イギリスのR. Milesさんが、4.995日に8.5等(V等級)でこの新星を確認しました。
天体のスペクトルは、ぐんま天文台の衣笠健三(きぬがさけんぞう)さん、西はりま天文台の内藤博之(ないとうひろゆき)さんと尾崎忍夫(おざきしのぶ)さん、岡山県井原市の藤井貢(ふじいみつぐ)さんによって報告され、天体が極大前後の新星であることがわかりました。天体は、はくちょう座V2362と命名されました。
新星が出現した位置近くには、15等ほどの星がありました。この星が爆発前の新星の姿なのかどうかを知るためには、新星の位置を詳しく調べなければなりません。筆者が、三重県熊野市の中島和宏(なかじまかずひろ)さん、東京大学の前原裕之(まえはらひろゆき)さん、そして前出の内藤さんが撮影した画像から測定した新星の位置は、
赤経: 21時11分32.346秒 赤緯: +44度48分03.66秒 (2000年分点)
でした。測定に使った星表によると、爆発前の星の位置は、これとは5秒角ほど違っており、この星が爆発したものではないことが判明しました。さらに、昔の画像を調べてみたところ、新星の位置近くに、問題の星の光に埋もれてはっきりとはしませんが、暗い星(18等程度)がありそうなことがわかりました。この星が爆発したのだとすると、新星爆発によって10等ほど(1万倍)明るくなったことになります。
参考文献
- IAUC 8697 (2006 Apr. 5)
- IAUC 8698 (2006 Apr. 5)
2006年4月7日