おおぐま座のM82銀河は、星が大量に生まれつつあるスターバースト銀河としてたいへん有名なものです。近くにある渦巻銀河M81といっしょにハの字型に並んだ写真を目にしたことのある方も多いでしょう。活発な星生成にもかかわらず、これまでM82銀河では超新星は見つかっていませんでしたが、このたび、Lick天文台自動撮像望遠鏡(KAIT)チームが初めてこの銀河の超新星を発見しました。
チームが超新星に気付いたのは3月5日(世界時、以下同様)に撮影した画像でしたが、以前に撮影した多数の画像にもこの超新星は写っていました。超新星のすぐ近くに明るいH II領域と思われる光点があり、新天体を自動的に検出するソフトウェアでは見逃されてしまっていたとのことです。最初に写っていたのは昨年11月21日で、そのときの明るさは16.0等、それから徐々に暗くなりましたが今年に入って2月最初までは16.4等で一定の明るさを保っていました。発見された3月5日には17.0等と暗くなっているところです。
超新星の名前は、その天体に気付いた画像や写真が撮影された年を元につけられます。今回の超新星は2003年から出現していましたが、今年3月の画像でまず発見されたため、超新星2004amと名付けられています。このような例は、超新星2004Mなど、いくつかあります。
M82銀河とペアを作っているM81に出現した超新星1993Jは、極大で11等ほどにもなる明るいものでした。それに比べて今回の超新星2004amはたいへん暗く見えます。その理由は、M82銀河の中での星間吸収によるものです。スペインのカナリア諸島にあるハーシェル望遠鏡で3月6.9日に撮影された赤外線画像(Ksバンド)では、この超新星は12等ほどとたいへん明るく写し出されました。星間吸収は、波長が短い電磁波ほど強く吸収する一方、波長の長い赤外線では影響が小さくなります。吸収がなければ、超新星2004amも極大時には11等ほど、現在でも12等ほどで見えたでしょう。同時に行なわれた赤外線分光で、今回の超新星は水素に富むII型と判明しました。活発な星生成で生まれた大質量星の最期の姿だったわけです。
これまでM82銀河で超新星が観測されなかったのも、今回のように強い星間吸収を受けて、我々から見えなかっただけであろうと思われます。赤外線観測が盛んになったこともあり、今後次々とM82銀河で超新星が発見されていくかも知れません。
参考文献
2004年 3月9日