【転載】VSOLJニュース(074)

チリのLiller、ケンタウルス座に新星らしき天体を発見


著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 VSNETへの通報によれば、チリの W. Liller は2001年10月1.0098日 (UT)、ケンタウルス座に新星らしき天体を発見しました。Lillerによる概略位置は次の通りです。

 13h 55.5s
  -64o 16'
  (J2000.0)

 Lillerの報告によれば、10月1.0098日 (UT) の写真で 8.6 等、9月19.000日 (UT)の写真には 11.0等よりも明るい天体はなかったとのことです。この報告を受けて、ニュージーランドの A. Jones は 10月2.333日 (UT) に眼視等級 9.2等で存在を確認しています。該当位置には既知変光星や赤外線天体はなく、この天体は新星または爆発型変光星である可能性が高いと思われます。日本の多くの地域では観測が困難な位置と思われますが、今後の詳しい観測が望まれます。

 なお、2001年にこれまでに報告されている銀河系内の新星は、いて座に3個(V4643 Sgr, V4739 Sgr, V4740 Sgr)、はくちょう座に2個(V2274 Cyg, V2275 Cyg)、わし座に1個(V1548 Aql)、さそり座に1個(V1178 Sco) と、近年にない多い数になっています。一般に新星とされている天体の報告数は、手元の資料では1936年に8個(V732 Sgr, V630 Sgr, V726 Sgr, V356 Aql, V368 Aql, CP Lac, V990 Sgr,AP Cru)となっているものが最多のようです。ただし V990 Sgr, AP Cru はスペクトル観測による確認は行われていないようです。もしLillerの天体が新星と確認されれば、単純な報告数では65年ぶりのタイ記録、スペクトルによる確認が行われた天体の数では1991年の7個(V351 Pup, V868 Cen, V2264 Oph, V2290 Oph, V4160 Sgr,V838 Her, V444 Sct)の記録を更新することになります。なお1936年には反復新星のU Scoの爆発も記録されています。

 このように「新星の数」は数え方によって多少の違いが生じますが、今年の新星の発見数は記録的な多さであったことは間違いありません。

 観測用星図などは、VSNETのホームページでも公開の予定です。公開時期はまだ未定ですが、以下を時々チェックしていただけるとよいでしょう。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/index-j.html

2001年10月2日

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転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]