【転載】VSOLJニュース(072)
ポルトガルのA. Pereiraは、いて座に新星らしき天体を発見しましたが(VSOLJニュース 71)、その後の観測によって確かに新星のスペクトルを示すことが確認されました。また天体には正式名称である V4739 Sgr (いて座V4739) が与えられました。
スペクトルの確認観測を行ったのは、岡山県の藤井 貢(ふじいみつぐ)さんで、8月28.44日 (UT) の観測から、速度幅に換算して 4700km/s に達するような非常に幅の広い水素やヘリウムの輝線が確認されました。このような特徴は膨張速度の特に大きい、非常に速い新星にみられるものです (vsnet-j 1552, 1553)。新星の光度も発見時には7.6等で、その直後に極大を迎えた模様ですが、すぐに減光に転じて2日で2等近い減光が観測されています。
また、チリのLiller、イギリスのGavinも、藤井さんほど精密なものではありませんがスペクトルを報告しており、いずれも特徴的な水素輝線などが記録されています(vsnet-alert 6491, 6500)。
藤井さんは、さらにこのスペクトルが1999年に爆発を起こした反復新星の U Sco(VSOLJニュース 12参照)のものと似ていることを指摘しています。U Sco では、爆発の後期で、通常の新星にみられる薄いガスから放射される禁制線がみられない、また降着円盤に由来すると考えられる連続スペクトルが観測されるなど、通常の新星とはかなり異なったスペクトルがみられます。V4739 Sgr の今後のスペクトル変化の観測が待たれます。また、U Scoのような反復新星と通常の新星では光度曲線に違いがあることが知られており、暗くなるまでの光度変化の追跡も重要です。U Sco のような反復新星は、近い将来超新星爆発を起こす可能性のある有力天体と考えられており、もし V4739 Sgr が同じグループの天体であれば、大変貴重な発見になります。
VSNET では以下のページを用意しました。
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nsgr01-2.html
このページには、発見者の Pereira から発見事情の寄稿をいただきました。8等星までの星の配列は記憶していて、新しい天体をすぐに新星と判断できたそうです。発見から12分後にはすでに第一報を報告した、とのことです。
2001年 8月29日
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