【転載】VSOLJニュース(064)
愛知県の長谷田勝美さんが、新星らしき天体を発見されたことをVSOLJニュース(063)でお伝えしましたが(天体の所属星座はさそり座と判明しました)、その後の観測によって天体の詳細がわかりつつあります。
まず、過去の写真の調査から、長野県の高見澤今朝雄さんが5月12日に撮影された写真にも10.2等で写っていることが明らかになりました。この天体の爆発を捉えた、現在までのところ最初の観測です。その10日前の5月2日には、チリのLillerの写真に11.0等以下で写っていなかったことから、爆発は5月2日と12日のごく短い間に起きたことがわかります。VSOLJニュース(063)の精測位置から、九州大学の山岡均さんが調査された結果、パロマー写真星図の該当位置付近には赤等級17.5等、青等級20等ぐらいの暗い星しかなく、この天体が少なくとも8等級の爆発を起こしたことが明らかになりました。
天体の種類を確かめる分光(スペクトル)観測は残念ながらまだあまり行われていませんが、チリのLillerによる対物プリズムを使ったスペクトル観測では、水素のHα線と思われる輝線が明瞭に捉えられ、光度変化の特徴や爆発の大きさとともに、この天体が新星であることを強く示唆しています。これまでの観測結果を総合すると、極大付近にとどまっている時間が長いことから、比較的「遅い」新星であると思われます。また、複数の観測者によって大きな光度変化が捉えられており、極大付近でも振動を繰り返すタイプの、比較的珍しい新星である可能性があります。今後の詳しい観測が望まれます。
天体には、IAUC 7650にて V1178 Sco (さそり座V1178) という正式名が与えられました。新星は変光星(明るさの変化する星)の一種でもあり、新星の最終的な正式名称には変光星としての名称が与えられます。たとえば、1999年年末に久々の肉眼新星となったわし座1999年第2新星(VSOLJニュース 27参照)には、V1494 Aql(わし座V1494)という最終名称が与えられました。超新星などとは違って、「さそり座新星2001」のような名称は一種の「通称」で、新星によっては複数の異なった通称が使われている場合があったり、あるいは新星としての性質の確認に時間のかかった場合などには、通称が付けられないままに最終名称が先に与えられる場合もあることに注意する必要があります。
VSNETの関連情報は以下のページにあります。CCD画像や星図などが見られます。
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nsco01.html
2001年 6月24日
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