【転載】VSOLJニュース(060)
日本のアマチュア天文家は、新天体を多数発見し続けています。このたび、山形県の板垣さんは、自身初めての新天体超新星(福原訂正:[vsolj-alert 886])となる超新星2001bqをおとめ座の銀河NGC 5534に発見されました。板垣さん、おめでとうございます。
IAUC 7628に報じられたように、超新星2001bqは、5月17.587日(世界時、以下同様)に60cm望遠鏡によるCCD画像から発見され、以前の12.562日に撮影された画像や18.566日の画像上で確認されました。また、Lick天文台のKatzman自動撮像望遠鏡でも5月10.3日から超新星が存在していたことが伝えられています。超新星のくわしい位置は、赤経14時17分42秒.14, 赤緯-7度25分00.7秒で、母銀河であるNGC 5534の中心核からおよそ28秒角東、2秒角北にあたります。この銀河は渦巻銀河ですが、いくつかの小さな銀河と衝突している最中のもので、小銀河のうちもっとも明るいものは、渦巻銀河の中心核から真東に25秒のところにあります。SN 2001bqは、このもっとも明るい小銀河に重なるように見えています。小銀河の中心ははっきりしませんが、この銀河のもっとも明るい箇所は超新星から見て4-5秒角西南西にあたります。このほかにも小銀河や渦巻の濃い部分などが数多くあり、超新星の同定には注意が必要です。
これまでに報じられている明るさは、以下の通りです。いずれもCCDによるもので、:は等級がやや不確かなことを表わします。
20010429.3 <19.5: シュワルツ(上限) 20010510.3 16.0: Lick天文台 20010512.562 16.0 板垣 20010514.3 15.3: Lick天文台 20010517.587 15.9 板垣(発見)
観測者が異なる場合、等級に系統的な差があることが多く、直接比較は危険ですが、この超新星はそれほど古いものではなく、極大かそれ以前である可能性が高いと思われます。
母銀河が我々から遠ざかる速度は2633 km/sと小さく、かなり近傍の銀河であることが伺えます。この後退速度が宇宙膨張によるものだとすれば、典型的なIa型超新星で期待される極大等級は14.5等ほどになりますが、近傍銀河では銀河固有の速度によって宇宙膨張からのずれが大きくなる場合が多く、この予測はかなり誤差があることが考えられます。今後の等級の変化や、スペクトル撮影による型の決定が注目されます。
2001年 5月20日
この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJの速報メーリングリストにご加入いただくと便利です(お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで)。
なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。