【転載】VSOLJニュース(052)

さそり座デルタ星がさらに増光


著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 VSOLJ ニュース (043) で、さそり座デルタ星が歴史的な増光を起こしたことを速報しました。ご覧になられた方も多かったと思いますが、この時の観測史上初の増光は比較的短い期間で終わり、8月の終わりには平常光度に近い明るさまで戻っていました。さそり座も夕方の西天に傾いて観測が難しくなってきた9月の後半になって、この星は再度増光を開始し、10月に2回目の極大を迎えたところで、地上からの観測シーズンを終えました。太陽に近づいて地上から観測不能になった時期にも、太陽観測衛星SOHOに搭載されたコロナグラフの画像などから、この星の活動が続いていることが示唆されていました。地上からも見えるようになった12月後半になって、平常光度よりもかなり明るい状態で観測が報告され始めました。

 この星の変光の発見者である S. Otero(オテロ)氏は、これまでの光度観測を解析して、この星の活動に75日の周期性があることを示唆していましたが、驚くべきことに、最近になってその予想に従って再度増光を始めたのです。京都大学運営の国際変光星ネットワーク(VSNET)への報告によれば、2001年4月29日には1.77等と見積もられており、すでに昨年に記録された明るさを超えて、観測史上最も明るい状態となっています。Otero氏によれば、現在も増光が続いている模様で、もし予想された周期通りに増光が続けば、さらに明るくなることも期待されています。もしかすると、1937年のカシオペア座ガンマ星の1.6等の記録を塗りかえるかも知れません。

 これからの季節、しばらくの間はいつもの年とはかなり違ったさそり座を目にすることができるでしょう。現在は真夜中ぐらいの時刻から見ることができますので、天気のよい時を狙ってぜひ確認してみてください。

2001年 4月30日

この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJの速報メーリングリストにご加入いただくと便利です(お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで)。
なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]