【転載】VSOLJニュース(034)
IAUC 7362によれば、桜井幸男さん(水戸)がいて座に新星らしき(*1)天体を発見したことが報告されています。発見は2000年 2月 4日に撮影されたフィルムから行われ、発見時点で10.5等星でした。また発見前の 1月25日の写真にも11.5等星で写っていたことが報告されています。現段階で新星に特徴的な爆発的なガスの放出があるかどうかは確認されていませんが、過去の写真には20等以下で写っていなかったことから、爆発的な増光現象であることはほぼ間違いありません。もし新星と確認されれば、「いて座新星2000」の名前で呼ばれるようになると思われます。
(*1) 新星と確定する前の天体が「新星状天体」と呼ばれることがありますが、「新星状天体」という別の意味の天文学用語があるため、新星と思われる天体を指す場合にこの用語は用いない方がよいでしょう。
天体の位置は
17h 55m 09s.84 (J2000.0) -19o 46' 01".0
と発表されています。
IAUC, VSNETにこれまでに報告された光度観測は以下の通りです。CCD光度ではまだ10等台と比較的明るく観測されていますが、写真光度ではすでに12等級まで減光しているようです。
YYYYMMDD(UT) mag observer 20000125.863 115p (Y. Sakurai) 20000204.837 112p (K. Takamizawa) 20000204.842 112p (K. Takamizawa) 20000204.863 105p (Y. Sakurai, 発見) 20000206.812 104C (Y. and R. Kushida) 20000209.832 120p (K. Takamizawa) 20000209.842 120p (K. Takamizawa) 20000210.862 10.77C (Kyoto University) 20000210.865 <104 (H. Maehara)
VSNETでは以下のページを用意しました。10等級までの周辺比較星や、リアルタイム光度曲線が掲載される予定です。
http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nsgr00.html
桜井さんは、過去にも1996年にいて座新星を発見されていますが、星の進化の末期の非常にまれな天体現象として知られる「桜井天体」(V4334 Sgr)の発見で世界的に有名です。この天体はまさに白色矮星に進化しつつある星の表面で、ヘリウムが爆発的に燃焼する「ヘリウム・フラッシュ天体」で、星が進化する過程を目の当たりにすることができた点で、天文学の歴史に残る発見といえるでしょう。
2000年2月11日
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