【転載】国立天文台・天文ニュース(670)

岡山天体物理観測所、巨星のまわりの惑星を発見か?!


 国立天文台、東京大学を中心とする研究グループは、国立天文台の岡山天体物理観測所(OAO)の188センチメートル望遠鏡の高分散分光器(HIDES)を用いた観測により、巨星の周りをまわる惑星を発見しました。

 これまでに、太陽以外の星をまわる惑星(太陽系外惑星)は約100個ほど発見されていますが、日本における発見は今回が初めてです。

 太陽系以外にも恒星の周りをまわる惑星が存在する間接的な証拠が示されたのは1995年のことでした。それ以来、約100個の太陽系外惑星が発見され、その存在は揺るぎないものとなりました。現在も世界中の様々なグループの熾烈な競争により、毎年10〜20個の割合で、新たな太陽系外惑星が見つかっています。しかし、そのほとんどは太陽に似た星の周りで見つかったもので、太陽より数倍も重い星や、進化の進んだ巨星のような、太陽とは違うタイプの星における惑星系は、これまでほとんど見つかっていません。

 2年前から、このような星の周りに惑星を探してきた国立天文台、東京大学を中心とする研究グループは、OAOの188センチメートル望遠鏡のHIDESを用いた観測により、HD104985と呼ばれる巨星の周りに巨大惑星を検出することに成功しました。この星の質量は太陽の約1.6倍と推定され、進化によって、その半径が太陽の約10倍に膨れ上がっています。

 今回の発見は、惑星からの引力を受けて星がわずかに揺り動かされ、中心の星の速度が周期的に変化する様子をとらえたものです。これまでに知られている太陽系外惑星のほとんどは、この間接的な方法で発見されており、まだ直接的に検出された例はありません。現在OAOでは、HIDESに「ヨードセル」と呼ばれる特殊なガスを封入したフィルターを取り付けることにより、約5メートル毎秒という超高精度で星の速度変化を検出することができます。

 今回、惑星が見つかった巨星HD104985では、周期が約198日、振幅が約160メートル毎秒の周期的な速度変化が検出されました。これは木星の約6.3倍の質量をもつ惑星が、中心星から約0.8天文単位の距離を、ほぼ円軌道でまわっていることを示しています。

 研究グループは、2001年からOAOで約180個の巨星を対象に系外惑星探査プロジェクトを進めてきました。今回惑星が見つかった星は、この中の一つです。

 観測はこれからも継続して行われ、この中からさらに多くの系外惑星が見つかることが期待されます。また、今後はすばる望遠鏡などの大口径望遠鏡も用いて、より多くの星、より暗い星へと対象を広げていこうと考えています。

 様々な質量や進化段階にある星に惑星を見つけることによって、今後は惑星系の形成から進化に至る過程を統一的に理解することができると期待されます。

参照

2003年9月4日 国立天文台・広報普及室


転載:ふくはらなおひと(福原直人)

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