【転載】国立天文台・天文ニュース(659)

火星の大きさ


 火星が話題になるにつれて、国立天文台にも問い合わせが増えてきました。火星の見た目の大きさ、観望の時期などについての質問が寄せられています。

 接近の日付が8月27日と聞いて、この日しか見ることができないと思われている人が多くいらっしゃるようです。

 この日の視直径(見た目の直径)は25.13秒角(1度=60分角=3600秒角)ですが、これは、大接近の日の火星の大きさを1キロメートル先に置いた円の直径に換算すると12.18センチメートルに相当します。下の表に見るように,約一ヶ月前の7月23日でも視直径は既に20秒角を超え、同じく10センチメートルを少し超えた大きさに相当します。

 以下に、主な比較の表を載せますが、「火星大接近」という天文現象は、その日だけ・数日間だけの短い現象ではないことがお分かりいただけるかと思います。

     日付      視直径(秒角) 1キロメートル先に置いた円が
                    火星と同じ大きさの視直径に
                    なる実直径(センチメートル)

     2003年 7月 2日      16.93         8.21
            7月 9日      18.17         8.81
            7月16日      19.46         9.44
            7月23日      20.79        10.08
            7月30日      22.10        10.71
            8月 6日      23.28        11.29
            8月13日      24.26        11.76
            8月20日      24.90        12.07
            8月27日      25.13        12.18
            9月 3日      24.89        12.07
            9月10日      24.22        11.74
            9月17日      23.20        11.25
            9月24日      21.96        10.65
           10月 1日      20.59         9.98
           10月 8日      19.20         9.31
           10月15日      17.84         8.65
           10月22日      16.55         8.02
           10月29日      15.36         7.44

注:

参考

 1988年 9月22日の大接近時の火星
                         23.82         11.55
 前回 2001年 6月22日の大接近時の火星
                         20.80         10.09
 次回 2005年10月30日の大接近時の火星
                         20.18          9.78
 今年よりも接近する 2287年 8月29日の大接近時の火星
                         25.16         12.20
 衝の時の木星(2003年 2月 2日)
                         45.56         22.09
 衝の時の土星本体(2002年12月18日)
                         20.64         10.01

 また、表には過去の大接近の時の比較もあります。これを見ても判るように、見た目の大きさにそれほど違いがないこともお分かりいただけるかと思います。

 8月の大接近の際の火星を見るには、日本など北半球の中緯度の地域では南中(真南に一番高く昇ること)してもかなり低い高度でしか見られません。見る時間にもよりますが、東から南、西が開けた場所で見るようにしましょう。

 火星は見慣れないとなかなか表面の模様をはっきりと見ることが難しい天体です。表にもあるように、既に火星の視直径はかなり大きくなってきています(大きいといっても木星と比べると半分ほどの大きさしかありません)ので、そろそろ目を馴らすために、見はじめたほうがよいかもしれません。

 「6万年ぶりの」などという数字だけが一人歩きしている感がありますが、数字だけに振り回されないようにしたいものです。

参照

2003年7月22日 国立天文台・広報普及室

この数値は国立天文台の相馬充(そうまみつる)さんに確認をいただいたものです。


転載:ふくはらなおひと(福原直人)

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