【転載】国立天文台・天文ニュース(641)
東京大学、国立天文台を中心とする研究グループは、すばる望遠鏡の主焦点カメラを使い、遠方銀河において18個の超新星を発見しました。カメラの1視野に12個もの超新星が写っており、これほど数多くの超新星を一度に発見したのは、世界で初めてのことです。
超新星は、星が一生の最期に起こす大爆発で、数千億個の星の大集団である銀河でも、100年に1度程度の確率でしか起きない、極めて稀な現象です。遠方の銀河で超新星を探査してきた東京大学、国立天文台のグループは、2002年秋にすばる望遠鏡を使い一度に18個発見することに成功しました。
これだけ多数の超新星を発見できたのは、8〜10メートル級の大望遠鏡では最も広い視野を誇る、すばる望遠鏡の主焦点カメラ(Suprime-Cam) のおかげです。Suprime-Camは満月の大きさに相当する30分角の視野をもっています。
これらの超新星は40〜70億光年の距離にあると推定され、最も遠いものは、70億年前の爆発を見ていることになります。
今回の観測は、日本の他、アメリカ・チリ・イギリス・スウェーデンなどとの国際共同研究で実現し、すばる望遠鏡による超新星候補は、8.2メートルすばる望遠鏡のほか、ケック10メートル望遠鏡、GEMINI 8.1メートル望遠鏡、VLT8.0メートル望遠鏡および2.5メートルハッブル宇宙望遠鏡を用いて追跡観測されました。
この国際共同研究の科学的目的は、「現在の宇宙が加速膨張しているのか」という、宇宙の枠組にかかわる問題に答えを出すことです。超新星の中でもIa型と呼ばれる超新星は、爆発本来の明るさを予測できるので、距離を測定するための光源として使うことができます。
これまで、宇宙の大きさが現在の約3分の2だったころの超新星は多数観測され、宇宙膨張が加速しているのではないか、という驚くべき示唆が得られています。このような加速膨張は、真空がエネルギーをもつために引き起こされているという説などもあり、最近の超新星の観測は、物理学の根幹にかかわる重大な問題を提起しています。
しかし、これが本当かどうかを確認するには、もっと昔の、宇宙がより小さかった時代の超新星を詳しく調べる必要があります。
このような超新星はずっと暗いため観測が難しく、これまで数例しか報告されていません。今回の発見により、その数が一挙に10 個以上増えることになり、研究グループでは、今後超新星が暗くなってからの画像を撮影して超新星の最大光度を精密に測定し、宇宙膨張の加速について明確な答を出すことができると期待しています。
2003年5月30日 国立天文台・広報普及室