【転載】国立天文台・天文ニュース(626)

2003年の天体発見賞/天体発見功労賞


新しい天体の発見は、古くから人々の関心の的でした。また、天体の性質を明らかにする現代天体物理学の格好の対象を提供するたいへん重要な貢献でもあります。どこに出現するかわからない天体の発見は、主としてアマチュア天文家の方々が活躍しています。日本天文学会では、1936年から天体発見を表彰していて、今回、2002年度の発見に対する表彰式が日本天文学会春季年会(宮城県仙台市・東北大学)で行われました。今回は天体発見賞が13件、天体発見功労賞が5件の合計18件と、過去最多になりました。これはアマチュア天文家の皆さんの不断の努力の賜と言えます。

日本での天体発見は大正時代以前にもありましたが、発見が世界に広く報告されるようになったのは昭和以後です。日本天文学会では、1936(昭和11)年に日本で相次いで彗星と新星が発見されたのを契機に、天体発見賞を制定しました。現在では、世界最初の発見に天体発見賞を、他の発見者に遅れたものの独立に発見された場合には天体発見功労賞を贈呈しています。

1947年に本田實(ほんだみのる)さんが彗星を発見し、敗戦に沈む日本を勇気づけたことは広く知られています。また、この半世紀で最も明るくなった新星である「1975年はくちょう座新星(はくちょう座V1500)」を発見したのは、当時高校生の長田健太郎(おさだけんたろう)さんでした。さらに、1965年秋の夕空を飾った池谷-関(いけや-せき)彗星、1996年春の百武(ひゃくたけ)彗星など、記録的な大彗星も多数あります。これらの発見にはすべて天体発見賞が贈られています。

参照

2003年3月28日 国立天文台・広報普及室

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  ◎2002年1月〜12月期の天体発見賞・天体発見功労賞
                      および天文功労賞受賞者紹介
         資料作成:山岡均(やまおかひとし; 天体発見賞選考委員会)
                〔注:日付・時刻はすべて世界時。敬称略〕

天体発見賞<13件>

・佐野康男 (さのやすお):1件 


  超新星2002anの発見
    2002年1月22.52日に28センチメートル望遠鏡を用いて撮影したCCD画像か
   ら、かに座の銀河NGC 2575に16.1等の超新星を発見、超新星2002anと命
   名された。

・広瀬洋治(ひろせようじ):1件 

  超新星2002apの発見
   2002年1月29.4日に25センチメートル望遠鏡を用いて撮影したCCD画像か
   ら、うお座の銀河M74 = NGC 628に14.5等の超新星を発見、超新星2002ap
   と命名された。

・串田麗樹(くしだれいき):2件

  超新星2002crの発見
    2002年5月1.701日に40センチメートル望遠鏡を用いて撮影したCCD画像か
   ら、おとめ座の銀河NGC 5468に16.5等の超新星を発見、超新星2002crと
   命名された。

  超新星2002fkの発見
    2002年9月17.719日に撮影したCCD画像から、エリダヌス座の銀河NGC 1309
   に15.0等の超新星を発見、超新星2002fkと命名された。

・土井隆雄(どいたかお):1件

  超新星2002gwの発見
    2002年10月13.27日に30センチメートル望遠鏡を用いて撮影したCCD画像
   から、ろ座の銀河NGC 922に17.0等の超新星を発見、超新星2002gwと命名
   された。

・MISAOプロジェクト:1件

  2001年のケフェウス座の新星らしき天体の発見
   2001年9月19.56日に500ミリメートル望遠レンズを用いて撮影したCCD画
   像から、ケフェウス座に12.7等の新星らしき天体を発見、報告した。

・長谷田勝美(はせだかつみ):2件 

  新星 へびつかい座V2540の発見
    2002年1月24.838日に100ミリメートル望遠双頭カメラを用いて撮影した
   写真から、へびつかい座に9.0等の新星を発見、へびつかい座V2540と命
   名された。

  新星 いて座V4743の発見
   2002年9月20.431日に120ミリメートル望遠レンズを用いて撮影した写真
   から、いて座に5.0等の新星を発見、いて座V4743と命名された。

・板垣公一(いたがきこういち):1件 

  NGC 205(=M 110)の新星らしき天体の発見
   2002年10月5.56日に60センチメートル望遠鏡で撮影したCCD画像から、ア
   ンドロメダ座の銀河NGC 205(=M 110)に16.4等の新星らしき天体を発見し
   た。

・池谷薫(いけやかおる):1件 

  周期彗星 153P/2002 C1 (Ikeya-Zhang)の発見
   2002年2月1.408日に、25センチメートル望遠鏡を用いて、9.0等の彗星を
   眼視で発見、C/1661 C1と同定され、153P/2002 C1 (Ikeya-Zhang)と命名
   された。

・宇都宮章吾(うつのみやしょうご):1件 
   
  彗星 C/2002 F1 (Utsunomiya)の発見
   2002年3月18.844日に、15センチメートル双眼鏡を用いて、10.0等の彗星
   を眼視で発見、C/2002 F1 (Utsunomiya)と命名された。

・鈴木雅之(すずきまさゆき):1件 

  彗星 C/2002 O6 (SWAN)の発見
   2002年7月25日に撮影されたSOHO探査機のSWAN検出器の公開画像から、
   9等の彗星を発見、C/2002 O6 (SWAN)と命名された。

・工藤哲生(くどうてつお):1件 

  彗星 C/2002 X5 (Kudo-Fujikawa)の発見
   2002年12月13.833日に、12センチメートル双眼鏡を用いて、9.5等の彗星
   を眼視で発見、C/2002 X5 (Kudo-Fujikawa)と命名された。


天体発見功労賞<5件>

・村上茂樹(むらかみしげき):1件 

  彗星 C/2002 E2(Snyder-Murakami)の独立発見
   2002年3月11.806日に、46センチメートル望遠鏡を用いて、彗星C/2002 
   E2(Snyder-Murakami)を11等で眼視で独立に発見した。

・藤川繁久(ふじかわしげひさ):1件 

  彗星 C/2002 X5 (Kudo-Fujikawa)の独立発見
   2002年12月14.858日に、16センチメートル望遠鏡を用いて、彗星 
   C/2002 X5 (Kudo-Fujikawa)を9等で眼視で独立に発見した。

・中村祐二(なかむらゆうじ):1件 

  新星 へびつかい座V2540の独立発見
   2002年1月24.867日に200ミリメートル望遠レンズを用いて撮影した写真
   から、新星 へびつかい座V2540を9.3等で独立に発見した。

・広瀬洋治(ひろせようじ)氏:1件 

  超新星2002boの独立発見
   2002年3月9.505日に25センチメートル望遠鏡を用いて撮影したCCD画像か
   ら、超新星2002boを15.5等で独立に発見した。

・串田麗樹(くしだれいき):1件 

  超新星2002dbの独立発見
   2002年5月24.729日に撮影したCCD画像から、超新星2002dbを16.9等で独
   立に発見した。

<天文功労賞>

長期的な業績:

・広瀬敏夫 (ひろせとしお):

  星食・掩蔽の観測と指導
   1967年に掩蔽観測グループを創設して以来35年間、星食、接食および小
   惑星による掩蔽の観測を行ない、なおかつ観測指導を多くのアマチュア
   に対して行なっている。1987年以降、天文雑誌で星食観測ガイドの執筆
   を継続しており、この記事をきっかけに掩蔽の観測を始めた観測者も数
   多い。月縁や惑星の精測位置、小惑星の形状の決定など、天文学に対す
   る貢献がたいへん大きい。

短期的な業績:

・早水勉 (はやみずつとむ):

  土星の衛星テティスによる掩蔽の観測指揮
   2002年12月15.8日UTに日本で起きた土星の第3衛星テティスによる恒星食
   に対して、現象の数日前に出された予報の配布、観測呼びかけを行ない、
   国内7地点で実際に食をとらえることに成功した。惑星の衛星による食
   が観測されたのは日本では初。さらに氏は、報告に基づく整約を迅速に
   行ない、テティスの実直径1060キロメートルによくフィットする円弧が
   得られた。掩蔽帯はヨーロッパにも達していたが、当地での観測成功は
   2地点に留まっている。広く分布した多数の観測者を必要とする掩蔽観測
   を成功に導くにおいて、氏の貢献は非常に大きい。

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訂正:『国立天文台・天文ニュース (623) すばる望遠鏡建設記録映画「未知
   への航海」が各賞を受賞』で受賞した賞の名称が間違っておりました。
   「文化庁優秀映画賞」は「文化庁優秀映画大賞」が正しい受賞した賞の
   名称となります。
   『国立天文台・天文ニュース (626) 板垣さん、明るい超新星を発見』で
   本文の番号が「(587)」になってしまっておりました。
   この超新星は「SN2003cg」と呼称されます。

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案内:国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡の公式スクリーンセーバーを公開
   しました。Windows版とMacintosh版がございます。詳しくは、
     http://subarutelescope.org/Information/SSaver/j_index.html
   をご覧ください。

転載:ふくはらなおひと(福原直人)

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