【転載】国立天文台・天文ニュース(495)
NASAの人工衛星HETEが強力なガンマ線バーストをとらえ、その位置を特定しました。これに基づいてその余光に対しておこなわれた追跡観測により、このバーストは、50億光年という、ガンマ線バーストとしては比較的近い距離で起こったことが確かめられました。一般的に、ガンマ線バーストは10億光年以上の距離で起こるものが多いと考えられています。
このガンマ線バーストGRB010921は9月21日に「とかげ座」で起こりました。HETE (High Energy Transient Explorer)はこの現象をとらえ、その精密な位置を通報してきました。この情報に基づいて、カリフォルニア工科大学のクルカーニ(Kulkarni,S.)たちのチームは9月22日にパロマー山の200インチ望遠鏡をその位置に向けて分光観測をおこない、その余光の赤方偏移を測定しました。この追跡観測は10月17日にも繰り返して行われ、その結果、50億光年という距離が求められたのです。それだけでなく、ニューメキシコ州の超大型干渉電波望遠鏡群(Very Large Array;VLA)アンテナも、10月17日にこのガンマ線バーストに起因すると思われる電波を捕らえました。これらはHETEによって得られた最初の具体的成果でした。
ガンマ線バーストは非常に遠い宇宙で起こる強力な爆発現象で、宇宙のどこかで1日に1回くらいの割合で起こっています。しかし、その爆発のメカニズムはほとんどわかっていません。数秒から数10秒の短時間に強いガンマ線を放射することで検出されますが、その時間があまりにも短いこと、またガンマ線は大気で吸収されて地上に届かないことから、詳しい観測は困難でした。バーストに伴ってX線や光、電波などがその余光として放射されますから、それらを観測して情報が得られるはずです。しかし、ガンマ線放射の精密精密位置を決めるのが困難であったため、ガンマ線バーストの正体を突き止める作業はなかなか進みませんでした。1997年になってイタリア、オランダが共同で打ち上げた人工衛星ベッポ・サックス(BeppoSAX)を利用して、やっと位置の特定が可能になり、現在少しずつその実体が明らかになりつつあります。HETEはそのガンマ線や余光のX線を使ってこれらガンマ線バーストの位置を精密に決めることを最大の目的として、マサチューセッツ工科大学(MIT)が建造した衛星です。初め1996年11月に打ち上げを試みましたが失敗し、現在運用しているのはNASAが2000年10月に打ち上げたHETE-2です。
2001年11月15日 国立天文台・広報普及室
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