【転載】国立天文台・天文ニュース(488)
アメリカの大部分で実施されている夏時間(daylight saving time)は、今年は10月28日で終わって、通常の時刻に戻ります。厳密には、夏の間使用していた時刻で10月28日の午前2時に時計を1時間戻し、午前1時にするのです。アメリカと電話連絡をしたり、メールをやりとりしたりしている方は、この時刻の変更にご注意ください。
アメリカでは、インディアナ州やアリゾナ州の一部、ハワイなどの太平洋の島々を除いて、夏の間、時計を1時間進めておく夏時間を実施しています。夏時間は4月の最初の日曜に始まり(午前2時に時計を1時間進めて3時にする)、10月の最後の日曜に終わることになっています。したがって2001年は4月1日から30週夏時間が続きました。年間の半分以上は夏時間を使っていることになります。2002年は4月7日から10月27日までの29週に夏時間が実施されます。
夏時間は本来、「太陽の出ている時間帯に合わせて人間も活動し、点灯時間を減らしてエネルギーを節約しよう」という趣旨で始められたものです。夏の間は早い日の出に合わせて人も起き出そうというわけです。したがって、季節によって日の出入りの時刻に大きな差のない熱帯や低緯度の地方は、この制度を採り入れる必要はありません。現在は世界の約70ヶ国で夏時間が採用されています。ただし、その開始、終了の日時は国によってさまざまなので厄介です。たとえばEUでは3月の最後の日曜に夏時間を始めて、10月の最後の日曜に終わります。その切り替え時刻は、アメリカでは午前2時ですが、EUでは午前1時です。 ロシアでは夏の間時計を2時間進め、冬でも1時間進めたままにしておくそうです。こうなると標準時はその意味を失ってしまった感じです。南半球のオーストラリアは10月の最後の日曜に始め、3月の最後の日曜に終わります。またイスラエルでは開始、終了の日に決まったルールはなく、その年々で決められますが、最低150日実施することだけは定められています。
かつて日本でも、1948年から1951年までの4年間、夏時間が実施されたことがありました。年配の方はご記憶のことでしょう。実施期間は年によって異なり、4月、あるいは5月に始まり、およそ9月上旬まで続くものでした。しかし「労働時間の延長につながる」、「かえってくたびれる」などと評判が悪く、1952年から廃止になりました。最近になってまた夏時間を復活させようという動きもあり、それに対し賛否両論があります。
2001年10月25日 国立天文台・広報普及室