【転載】国立天文台・天文ニュース(487)

5億年前の小惑星シャワー


 今から約5億年前に、現在の数10倍もの頻度で隕石が落下した「小惑星シャワー」が起こっていたという発表がありました。これは、石灰岩の採石場で発見された、いくつもの化石隕石から推定されたことです。

 今年の9月11日にマンハッタンで起こった同時多発テロの影響で、さまざまな国際会議が中止になったり、延期を余儀なくされる事態に陥りました。その中で、国際隕石学会の年会は、ローマ、バチカンのポンティフィカル・グレゴリアン大学で無事に開催に漕ぎ着けました。その講演会で、スウェーデン、ギョーテボルク大学のシュミッツ(Schmitz,B)たちが、この小惑星シャワーの存在について発表をしたのです。

 南スウェーデンの石灰岩の中に、ときどき直径1センチから20センチほどの、得体の知れない斑紋があります。これらは石灰岩ではない石の塊で、どうしてこのようなものが存在するのか謎となっていました。採石場の職人たちが集めておいた40個ほどのその石塊を解析したシュミッツは、その組成と鉱物学的特徴から、それらが隕石であることを確認しました。200万年にわたって堆積したと思われる石灰岩のさまざまな層からこれらの隕石は発見されています。シュミッツたちはその隕石の数から、石灰岩の堆積した4億8000万年前には、現在の25倍から100倍の頻度で隕石が落下していたと結論したのです。つまりこれが「小惑星シャワー」です。

 こうして発見された隕石は、すべてL型サブクラスと呼ばれる鉄分の少ないコンドライト隕石です。その上、激しいショックを受けた痕跡が残されています。一方、現在地球に落下するコンドライト隕石は、そのほとんどが鉄分の多いL型とH型で、石灰岩中で発見された隕石とは異なっています。このことも小惑星シャワーがあったひとつの証拠と考えられています。つまり「小惑星帯の中でL型の母天体が大きな衝突によって破砕され、そのときに生じたたくさんの破片の一部が小惑星シャワーとなって地球に落下した」というシナリオが想定されるからです。コンピュータ・シミュレーションからは、破片の多くは互いに似た軌道をたどる小惑星の「族」になること、さらに小さな破片の一群が地球と交差する軌道に送り出されることが結論されています。

 この時代の小惑星シャワーが事実であれば、スウェーデンだけでなく、同様に隕石を蓄積している場所が他のどこかにあってもいいはずです。そのような場所が世界のどこかで発見されれば、何よりも確かな検証になるでしょう。

参照

2001年10月18日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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