【転載】国立天文台・天文ニュース(486)
10月末から11月始めにかけて、天球上で水星と金星の接近が続きます。また、10月30日には水星が西方最大離角になり、夜明け前の東の空で比較的見やすい位置にきます。このとき、明るい金星がすぐ右上にありますから、金星を手がかりにすぐ水星を発見できます。水星をご覧になるチャンスといえましょう。このとき水星はマイナス0.5等、金星はマイナス3.9等の明るさです。
天球上で二つの惑星の赤経(あるいは黄経)が等しくなることを合(ごう)といいます。合は二つの惑星の接近を知る目安です。しかし、それぞれの惑星の軌道面が少しずつ異なるため、合のときの惑星間の見かけの距離は場合によって違います。惑星同志が非常に近付いて合になるときも、それほど近付かないで合になるときもあります。しかし、今回の水星と金星の接近は合にはなりません。水星がずっと金星の東にいるまま、接近がかなり長期間続きます。二星の角距離が1度以下の期間がほとんど11日近くにわたります。動きの速い内惑星同志でこのように接近が続くのは、たいへん珍しいことです。
水星と金星が近付いてその角距離が1度以下になるのは、10月28日の3時(日本時)頃で、また1度以上に離れるのは11月7日23時頃です。その間ずっと水星と金星は寄り添うように並びます。その間に角距離が極小になるときが2回あります。最初が10月30日8時頃で、二星の間隔は角度の35分です。月の直径よりほんの少し大きい距離と考えればいいでしょう。二回目が11月4日5時頃で、間隔は39分です。したがって、10月30日の水星の西方最大離角は、水星と金星の距離が、今回の接近のほとんど最小のときに起こります。
水星と金星が今回以上に接近することも、もちろんあります。たとえば、1990年10月16日には角度で1分28秒にまで接近しています。しかしこのとき、水星は見かけ上太陽に近く、接近した状態を肉眼で見ることはできませんでした。将来では、2005年6月28日に約4分に接近すると計算されています。この付近では7月9日が水星の東方最大離隔ですから、そのときには比較的接近した状態で二星を見ることができるかもしれません。
2001年10月18日 国立天文台・広報普及室