【転載】国立天文台・天文ニュース(485)
ハッブル宇宙望遠鏡とケック望遠鏡の観測によって、非常に遠方に、ごく小さい若い銀河が発見されました。この種の銀河は、現在あちこちに見えているような大きい銀河を作る素材であると思われます。この発見には、銀河団による強力な重力レンズ現象が大きな助けになりました。
ヨーロッパ、アメリカの天文学者は協力し、ハッブル宇宙望遠鏡とハワイの口径10メートル、ケック望遠鏡を使って、可能な限り遠距離にある天体を系統的に捜索するプログラムを進めていました。その結果、最近になって、赤方偏移z=5.58の「赤ちゃん銀河」を発見しました。この銀河は生まれて200万年くらいと思われ、宇宙年齢が140億年であるとの見積もりをもとにして、約134億光年の距離にあると考えられます。
始め、ハッブル宇宙望遠鏡でこの若い銀河は発見されました。この銀河は、エイベル2218(天文ニュース477参照)と呼ばれるたくさんの銀河が集中している銀河団の向こう側にあり、その銀河団による強い重力レンズ作用を受けて30倍にも拡大され、二重像になって見えていました。そして、この大きな拡大作用のおかげで、発見された銀河の状況が詳細にわかったのです。「この重力レンズ現象がなければ、たとえ1995年と1998年におこなわれたハッブル深宇宙観測ほどの長時間露出をしたとしても、おそらく発見できなかったろう」と関係者は述べています。
こうして発見された銀河は、ケック望遠鏡による分光観測によって赤方偏移が測定され、。その結果、はじめに述べたように、たいへん遠方にあることが確認されました。これらの観測は、それぞれの望遠鏡の能力を極限まで利用したものといえます。
この観測チームのリーダーであるカリフォルニア工科大学のエリス(Ellis,R.)によりますと、この若い銀河の質量は銀河としては驚くほど小さく、太陽の数100万倍程度しかないそうです。これはわれわれの銀河系の10万分の1以下です。また直径は500光年前後ということで、10万光年の直径をもつ銀河系に比べて、たいへん小さいことがわかります。宇宙の歴史の過程で、このような小さい銀河がいくつも集まって、今日見られるような大きい銀河を作ったに違いないと考えられます。この発見を通して、「第一世代の星がどのような環境で生まれるのかをいつかは知ることができるかもしれない」とチームのひとりであるオ ランダのキュイケン(Kuijken.K)は感想を述べています。
2001年10月11日 国立天文台・広報普及室
『国立天文台紹介ビデオシリーズ4 生きている太陽 コロナの輝きを追って』 が出来ました。
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