【転載】国立天文台・天文ニュース(484)

小惑星1998 ST_27は連星


 アテン群の小惑星1998 ST_27が連星らしいとの報告がありました。

 ジェット推進研究所のベナー(Benner,L.A.M.)たちが、10月7日と9日にプエルトリコのアレシボ天文台でおこなった観測によりますと、その波長13センチメートルの遅延ドップラー・レーダー像(delay-Doppler radar images)から、1998 ST_27が明らかに連星系であると認められたそうです。連星をなす二星の間は少なくとも4キロメートル離れ、その大きさは少なくとも3倍は違っているとのことです。この事実を確認する光学観測が望まれます。

 このような発見が続いて、連星の小惑星、衛星をもつ小惑星も、確認された数がかなり増えてきました(天文ニュース472,444,433,425,421,382など参照)。

 1998 ST_27は、1998年9月24日に、リンカーン研究所の観測者たちが19.5等の明るさで「ペガスス座」に発見した小惑星です。周期がたった0.74年しかない、いわゆるアテン群に属する小惑星です。離心率が0.53とかなりつぶれた楕円軌道をもつので、黄道面に投影すればその軌道は地球の軌道と交差します。そこから、潜在的に地球と衝突する可能性をもつ小惑星(PHA;Potentially Hazardous Asteroid)のひとつと考えられています。そうはいっても、近い将来に衝突するようなことはまったく考えられません。

 1998 ST_27は、現在地球に比較的に近い位置にあって、10月12日には「みずがめ座」で0.062天文単位(930万キロメートル)にまで接近します。それでも明るさはやっと15等台ですから、小望遠鏡で見ることは難しいでしょう。そのあとは急速に南へ移動し、10月末には3倍くらいの距離に遠ざかってしまいます。MPECによる予報位置はつぎの通りです。

    日付      赤経(2000.0)赤緯    地心距離  日心距離  太陽離角  明るさ
    2001     時    分   度   分       AU        AU      度      等
    Oct.12   21 27.31  -03 26.3    0.062      1.034    123.6    15.4
        16   20 01.17  -26 13.7    0.071      1.005     94.3    16.5
        20   18 49.65  -38 46.7    0.094      0.974     74.0    17.9 
        24   17 57.45  -44 24.8    0.123      0.941     61.1    19.0
        28   17 19.80  -46 54.6    0.155      0.907     52.1    20.0

参照

2001年10月11日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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