【転載】国立天文台・天文ニュース(483)

小惑星エロスの表面


 探査機ニア・シューメーカーが小惑星(433)エロスに着陸する直前に撮影した画像から、その表面の状態が明らかになりました。凹地には非常に細かいダストが堆積してなめらかですが、一方ではクレーターから放出されたと思われる大きなブロック状の石がごろごろしています。小惑星の表面がこれほどはっきり捕らえられたのは初めてのことです。

 小惑星エロスは長さ34キロメートル、幅13キロメートルの細長い形で、地球接近小惑星としては、(1036)ガニメドについで二番目に大きい天体です。1年間にわたって接近観測を続けていた探査機ニア・シューメーカーは、この2月12日(世界時)に軟着陸に成功(天文ニュース417)、その降下の際に70枚のエロス表面の詳細な画像を撮影しました。もっとも接近したときの画像は高さ129メートルからのもので、直径100メートルほどのクレーターの内部を1センチの解像度で撮影しています。これら詳細な画像の解析から、エロス表面の状況が、これまでになかった正確さで得られたのです。

 着陸点周辺で得られた画像の特徴は、そこにさまざまな地形があることでした。なかでも、ブロック状の石が散乱している地点と、細かいダストが凹地に池のように堆積したなめらかな部分とがあることが目を引きます。散らばっている石は、大きなものは直径が100メートルもあります。これらの石は、エロスでは最大で(直径7.6キロメートル)シューメーカーと仮に名付けられたクレーターから放出されたと推定されています。堆積しているダストも科学者にとって予想外のことでした。エロスのように小さい天体ではその重力も小さいため、クレーターを生じるような衝突があれば、その衝撃で細かい粒子はきれいに吹き飛ばされてしまうという考え方があったからです。このように細かい粒子が堆積している状況は、月の表面でもこれまでに見られていません。これらの粒子は小惑星のレゴリス(土壌)から何らかの方法で選別され、移動して堆積したと思われますが、詳しい機構はまだわかっていません。

 この成功にもかかわらず、その内部を含め、小惑星には解らないことがまだたくさん残され、今後も探査が計画されています。日本のミューゼス-C計画では、小惑星1998 SF36 に弾丸を打ち込み、舞い上がるダストなどを採集して、地球に持ち帰る予定です。小規模の爆破実験をしたり、レーダーで断層図を作ろうなどという計画も進められています。

参照

2001年10月4日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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