【転載】国立天文台・天文ニュース(481)
韓国天文研究院、大徳電波天文台と日本の国立天文台は、この6月に、それぞれの電波望遠鏡を使用して、波長3.7ミリメートルのVLBI観測をおこないました。そして、「オリオン座KL天体」および晩期型星である「おおいぬ座VY星」からの一酸化ケイ素によるメーザー輝線の干渉信号(フリンジ)を検出し、観測に成功しました。この波長によるVLBI観測の成功は、日韓両国にとって意義深いものと思われます。
日本で使用したのは、長野県野辺山の45メートル電波望遠鏡で、韓国のものは1986年に建設された大田市、大徳電波天文台の14メートル電波望遠鏡です。この両望遠鏡の距離は約1000キロメートルあります。天体が放射している電波をこのように距離の離れた二つ以上の電波望遠鏡で受信し、その受信信号を干渉させることができれば、その電波を出している天体を非常に高い分解能で観測することができます。干渉させるためには観測結果を持ち寄って、相関機で再生して相関処理をおこなわなければなりません。観測に成功したことは干渉結果にフリンジが出ることで確認できます。このような観測方法を超長基線電波干渉法(Very Long Baseline Interferometry;VLBI)といい、精密な位置観測や天体の微細構造を突き止めるために用いられます。この方法は望遠鏡間の距離が遠くなるほど分解能が高くなり、天体の細かい構造がわかります。
今回観測に用いられたのは、一酸化ケイ素(SiO)の出す波長3.7ミリのメーザー電波です。VLBIの観測は波長が短いほど困難になります。波長3.7ミリはVLBIの観測としてはもっとも短く、困難なものでしたが、6月2日の観測では、それに見事に成功しました。この波長3.7ミリの観測を積み重ねることによって、年老いた星のガス放出のメカニズムや、銀河中心の巨大ブラックホールの解明などが期待されています。
今回のVLBI観測の成功は、その結果もさることながら、アジアにおいて、波長3.7ミリのVLBI観測を二国間で初めておこなったこと、特に韓国で初めてVLBI観測に成功したことで意義深いものがあります。現在国立天文台は天文広域精測望遠鏡計画(VLBI Exploration of Radio Astrometry;VERA)を推進し、銀河系の精密立体地図作りを目指しています。一方韓国ではVLBIネットワーク(Korean VLBI Network;KVN)を建設中です。今後日韓協力が進めば、VERAとKVNを重ね合わせたより大規模のネットワークによって、より高精度の地図、より高精度の天体画像が得られることが期待されます。
2001年9月27日 国立天文台・広報普及室