【転載】国立天文台・天文ニュース(479)

ディープ・スペース1号、ボレリ彗星に最接近


 宇宙探査機ディープ・スペース1号がボレリ彗星に接近して観測をおこないました。探査機が彗星に接近観測をしたのは、1986年にハレー彗星に対してジオット、ベガ、プラネット-Aなどが接近して観測を実施して以来のことです。

 ディープ・スペース1号(Deep Space 1)がボレリ彗星(19P/Borrelly)に最も接近したのは、9月22日22時30分(世界時)です。最接近の距離は2200キロメートル、映像を撮影したほか、赤外分光観測、彗星周辺のイオンや電子の密度、磁場強度やプラズマ波などの観測をおこないました。得られた画像は彗星核の像としてはこれまでに得られた最高のもので、10キロメートルほどの長さの、少し中央がくびれた、細長い岩と氷の真っ黒な核を写しだしています。核を中心としてコマが生じ、それに対して対称に太陽風が流れると思われていましたが、太陽風はむしろコマだけに対して対称に流れ、核は中心から外れた位置にありました。これは、コマの生成過程がこれまでに考えられていたよりもずっと複雑であることを意味するものです。

 ディープ・スペース1号は1998年10月に打ち上げられた探査機で、イオン・エンジンなど深宇宙探査に必要ないくつかの新技術をテストする目的の探査機でした。それらのテスト終了後に、1999年7月に小惑星(9969)ブライユに接近観測をおこない(天文ニュース285)、さらにミッションを延長して、今回ボレリ彗星に接近したのです。

 ボレリ彗星は1904年12月にマルセーユのボレリ(Borrelly)が発見した周期彗星で、周期が6.86年、発見時を含めて13回の回帰が観測されています。現在は近日点を通過した直後で、10等程度の明るさで明け方の空を「ふたご座」から「かに座」へ向かって移動しています。

 今後彗星に接近観測を予定している探査機はいくつもあります。すでに打ち上げられている探査機スターダストはビルト第2彗星(81P/Wild 2)に2004年に接近してその周辺のダストを地球に持ち帰る予定ですし、これから打ち上げられる探査機コンタワー(Comet Nucleus Tour;CONTOUR)はエンケ彗星(2P/Encke)およびシュワスマン・ワハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann 3)に、また探査機ロゼッタ(Rosetta)はワータネン彗星(46P/Wirtanen)に接近観測の計画です。さらにディープ・インパクト計画では、テンペル第1彗星(9P/Tempel 1)に銅の弾丸を撃ち込み、そのときに舞い上がる破片を観測する予定です。21世紀は、彗星観測の世紀になるかもしれません。

参照

2001年9月27日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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