【転載】国立天文台・天文ニュース(475)
天文ニュース(473)でお知らせしたニート彗星(C/2001 Q4 NEAT)は、その後の観測を加えて軌道決定の精度が上がった結果、前回の推算よりずっと太陽に近付き、より観測しやすい状況になることがはっきりしました。たぶん双眼鏡でたやすく見える明るさになり、おそらくは肉眼で見える彗星になりそうです。
ひょっとすると「大彗星」の期待がもてるかもしれません。彗星研究者にとって明るいニュースです。
ニート彗星は、8月24日から9月10日にわたる38観測の結果を整約してその軌道がより正確なものに改良され、近日点通過時刻が1年以上早まり、2004年5月末にほとんど1天文単位の距離で近日点を通過することがわかりました。まだ近日点通過時刻に数週間の不確実さは残されていますが、もう軌道全体が大きく変わることはありません。その結果、2004年の5月から6月にもっとも明るく、見やすくなると思われます。現在求められている軌道要素からは、5月の中頃に地球に0.44天文単位にまで接近して、夕方の西空に見えると計算されます。ただし、そのときどのくらいの明るさになるかは、まだ不確定の要素が多いので、正確な予測はとてもできません。そこで、このニュースの始めに述べたようにあいまいな表現をすることになってしまうのです。今後明るさがどのように変化するか、楽しみに見守ることにしましょう。国際天文学連合回報に載せられた、改訂された軌道要素はつぎのとおりです。
近日点通過時刻 = 2004 May 25.993 TT 近日点距離 = 1.00055 AU 近日点引数 = 0゜.659 昇交点黄経 = 210゜.670 2000.0 軌道傾斜角 = 100゜.145
なお、このニート彗星は、9月中旬現在、「ろ座」にあって17.3等の明るさで南西に移動しています。地球からの距離は約9.3天文単位です。
2001年9月13日 国立天文台・広報普及室