【転載】国立天文台・天文ニュース(466)

太陽探査機ジェネシスの打ち上げ


 アメリカ航空宇宙局(NASA)は、8月8日(現地時刻)に、ケープカナベラル空軍基地から太陽探査機ジェネシス(Genesis)を打ち上げました。ジェネシスは目下予定軌道に乗って順調に飛行を続けています。このジェネシスは、地球太陽間の空間で、太陽から噴き出した太陽風に含まれる粒子をとらえ、地球に持ち帰ることを目的とした探査機です。これに成功すれば、月以外の天体から物質を持ち帰る初めての例になります。

 現在の太陽や惑星などが原始太陽系星雲から誕生したことに疑いの余地はありません。その原始星雲がどのように進化したかについては、いくつものモデルが提案されています。この種のモデル作りにおけるひとつの問題点は、原始太陽系星雲の化学組成、また、酸素、窒素やその他の希ガスなどの同位体比がはっきりわかっていないことです。

 ところで、太陽は原子太陽系星雲物質の99パーセントを集めていますから、太陽の組成を調べることは、原始星雲の組成を知ることにつながります。ただし、太陽内部は核反応によって組成が変化しますから、太陽表面の物質を調べなければなりません。しかし、非常に高温ですから、探査機を直接太陽に近づけるのは困難です。そこで、太陽表面から噴出した物質を調査しようというのです。なかでも、コロナの中には密度、温度の低いコロナホールと呼ばれる領域があり、強い太陽風を噴き出しています。そのコロナホールから出てくる粒子が原始太陽系星雲の物質を調べるのに好適と思われています。太陽風は主として陽子と電子の流れですが、これらは収集の対象にはなりません。収集の目標は、太陽風に含まれている、もっと質量の大きい核子です。

 ジェネシスはこれから太陽方向に飛行し、予定どおりに進めば、この11月に、地球から約150万キロメートル離れたL1と呼ばれる重力の平衡点に到達します。その周辺に2年余りとどまって、収集器の蓋を開き、太陽風粒子を集める計画です。ただし、収集が期待される粒子の量は、10から20マイクログラムというわずかな量にすぎません。収集が終わるとジェネシスは地球に戻り、2004年9月にそれら粒子の入ったカプセルにパラシュートをつけて投下します。このカプセルをヘリコプターが空中でとらえ、ジョンソン宇宙センターに運ぶという手順が予定されています。

 こうして得られた太陽風粒子は、太陽系進化の歴史を探る上で、大きな役割を果たすことが期待されています。

参照

2001年8月16日 国立天文台・広報普及室

お知らせ:都合により、8月23日は「天文ニュース」の発行を休みます。
          次回は8月30日に発行の予定です。

転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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