【転載】国立天文台・天文ニュース(461)
きたる8月16日未明に、木星が月の後ろに隠れる「木星食」が起こります。晴 れてさえいれば日本全国で見ることができます。夏休みの最中でもありますか ら、これを観測して自由研究の課題にするのも面白いのではないでしょうか。
木星食は、上にも書いたように、木星が月の後ろに入り込んで見えなくなる 現象です。このときの月は、月齢ほぼ26.0の細い有明(ありあけ)の月で、東の 空、高度20度くらいのところに見えています。木星は月の明るく光っている方 の縁から月の後ろに入り、1時間足らずで月の欠けた方の縁から出てきます。そ の時刻は場所によって10分程度の差があり、東京では、木星が月に隠される 「潜入」の時刻が3時03.1分、月の後ろから出てくる「出現」が3時57.7分です。 見る立場でいいますと、何もない暗いところに突然木星が見え出す「出現」に 興味深いものがあります。いずれにしても、潜入、出現の時刻をできるだけ正 確に求めるのが観測のポイントです。本気で観測をするなら。悪くても1秒の精 度、できることなら0.1秒の精度でその時刻を求めたいものです。
木星食に限らず、惑星が月の後ろに隠れる「惑星食」は、それほど珍しいも のではありません。世界的に見れば、たとえば2001年には、水星食が1回、金星 食が2回、火星食が1回、木星食が5回、土星食が9回もあります。しかし、その 中で日本で見ることができるものに限りますと、12月14日の金星食、8月16日の 木星食、10月8日および11月4日の土星食の4回にすぎず、その中には、日本の一 部からしか見られないもの、高度が低かったり、太陽に近すぎたりして観測に 適さないものも含まれます。結局、日本で、しかも好条件で観測できるものは そう多くはありません。その点で8月16日の木星食は比較的条件がよいといえま しょう。ただし、西の地方ほど月の高度が低いときに「潜入」が起こりますか ら、「潜入」は観測しにくくなるかもしれません。
日本全国で、しかも好条件で見られた前回の惑星食は、1997年10月16日夜明 け前の土星食でした。このときは残念ながら天候に恵まれず、実際に観測がで きたのは日本の一部にすぎませんでした。同様の条件でこの次に見られるもの は、2003年5月29日の金星食になります。ただしこれは昼間の現象ですから、望 遠鏡がないと観測しにくいと思われます。
2001年7月26日 国立天文台・広報普及室
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