【転載】国立天文台・天文ニュース(459)
アメリカ航空宇宙局(NASA)は、周回をしながら水星を観測する探査機メッセンジャーを送り出すメッセンジャー計画を、この6月に最終的に承認しました。予定通りに進めば、打ち上げが2004年3月、探査機は5年後の2009年4月から1年以上にわたって水星を周回し、さまざまな観測をおこなうことになっています。水星の探査は、1974年から1975年にかけて、マリナー10号が3回の接近観測をおこない、その表面のクローズアップ写真を送ってきて以来、なんと30年ぶりのことです。
水星探査機メッセンジャー(MErcury Surface Space ENvironment,GEochemistry and Ranging mission;MESSENGER)は、その命名からもわかるように、表面から水星を観測し、スペクトロメーターなどでその表面組成を調べ、また、磁場ゃ重力などを詳しく測定します。それらの観測を通して、地核の組成や構造、密度が大きい理由、磁場の性質、神秘な極冠など解明しようとするものです。水星は見かけ上太陽に近いところにあるので、地球上では最大離角前後でなければ見ることができません。このことは、観測装置を傷めるおそれがあるので、ハッブル宇宙望遠鏡を向けることが困難であることを意味します。
水星をよく知るためには、どうしても探査機を送ることが望まれるのです。
太陽の重力の影響を大きく受けるので、これまで、水星に探査機を送るにはかなり複雑な推進システムが必要と考えられていました。その困難を克服するため、今回の計画では、メッセンジャーは、金星に2回(2004年6月、2006年3月)、水星に2回(2007年6月、2008年4月)のフライバイをおこなうことで燃料を節約し、うまく水星周回の軌道に乗せることにしています。周回軌道は、もっとも水星に近付くところで表面から200キロメートル、遠いところで1万5000キロメートルの楕円、軌道傾斜は80度、12時間で水星を周回する予定です。この軌道に乗せることができれば、マリナー10号では観測することができなかった部分の水星表面の写真も、はじめてもたらされることになるでしょう。水星は昼夜の温度差が500度に達するともいわれ、常に日の当たらない極には氷が存在するという説もあります。これらの問題ががはっきり解決されるかもしれません。
探査機メッセンジャーは、これから3年足らずの間に、日本円でおよそ300億円をかけて建造されます。結果が得られるのはまだかなり先になりますが、水星の表面は太陽系内でもっとも古い時代のものといわれます。最後に残された地球型の岩石惑星の探査によって何がわかるか、楽しみに待ちたいものです。
2001年7月19日 国立天文台・広報普及室
---------------------------------------------------------------------- ● ALMA(アルマ)の推進に向けた署名のお願い 拝啓 蒸し暑い日が続くこのごろですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。 国立天文台では、すばる望遠鏡の成功につづいて、日本の天文学コミュ ニティーの支持のもと、南米チリのアンデス山中に日本・北米・欧州で 共同建設する「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMA(アルマ)」 の準備を進めてきました。来年から建設を開始し10年後には完成して、光 では見えない未知の宇宙を開拓し、宇宙における惑星・生命の起源にもせ まる、世界でただ一つの夢の電波望遠鏡の建設です。 ALMAは各方面から広いご支持をいただいてはいるものの、ご存じの 厳しい財政状況のなかで計画を推進するには、皆様のいっそうのご支援が 必要です。そこで皆様のご支持を形にして示すため、ALMA建設推進を 要望する署名を広くお願いしております。科学の推進には、幅広い市民の 皆様の支持が基本です。ぜひご賛同いただき、ご署名くださいますようお 願い申し上げます。 敬具 国立天文台長 海部宣男 ※署名は、http://www.nro.nao.ac.jp/~lmsa/syomei/ にて行っております。