【転載】国立天文台・天文ニュース(457)

測量法の改正とそれにともなう経緯度の変更


 測量法および水路業務法の一部が今第151国会で改正され、この6月20日に法 律第53号として公布されました。その結果、これまでの日本測地系は廃止され、 新たに、世界測地系が採用されることになりました。この法律は、「公布の日 から1年以内に政令で定める日から施行される」と定められ、現実には2002年4 月1日が施行日に予定されています。

 これまで、日本の基本測量や公共測量は、地球の形をベッセル楕円体にとっ た日本測地系にもとづいていました。そのもっともわかりやすい結果が、国土 地理院発行の5万分の1、あるいは2万5000分の1の地形図です。そして、これら の地形図から、必要な地点の経緯度を知ることができます。しかし、人工衛星 や超長基線電波干渉法(VLBI)などを利用した精密な測量が世界的に実施される ようになりますと、日本測地系は、地球全体に対してよく合わないこと、また 過去の日本の測量結果は、誤差の蓄積によるひずみをもっていることなどが明 らかになってきました。そのため、観測地点を世界的な立場で取り扱うには不 便でした。また、汎地球測位システム(GPS)を利用して精度の高い位置を測定す るためにも、地図に関連するさまざまな情報を処理、管理、解析する地理情報 システム(Geographic Information System;GIS)を利用するためにも、これらの 欠陥をとり除いた世界測地系へ変換することが急がれていました。そのため、 今回の改正がなされたのです。

 この法律改正で採用された地球楕円体は、中心が地球の重心に一致し、短軸 が地球の自転軸と一致すると定められています。しかし、その形や大きさを決 め、それを現実の位置に結びつけるパラメーターが具体的に与えられたわけで はありません。それらは今後政令によって定められます。しかし現実にはGRS80 (Geodetic Reference System,1980)楕円体(赤道半径6378137メートル、扁平率 の逆数298.257222101)にもとづく国土地理院による測地成果2000が採用される ことは確実です。そうすると、たとえば日本の中央部では、これまでの経緯度 に対し、経度が12秒(290メートル)減り、緯度が12秒(350メートル)増加する程 度の変化が生じます。つまり、同じ経緯度の地点が北西に450メートルほど移動 する形になるのです。

 この変換は、日本国内の基本測量、公共測量に対してだけ適用されるもので、 1999年に定められた測地定数や、地球の大きさ、形を決めた1976年のIAU楕円体 の数値を変えるものではありません。また、天文観測によって決められる天文 経緯度も、この改正にはまったく無関係です。

参照

2001年7月12日


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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