【転載】国立天文台・天文ニュース(448)
オリオン星雲内で、最近誕生したばかりのたくさんの褐色わい星をダストの円盤が取り囲んでいる、という事実が発見されました。これは、褐色わい星が、惑星よりもより恒星に近い天体であることを示唆すると考えられています。
ヨーロッパ南天天文台のアルベス(Alves,J.F.)たちによる国際チームは、2000年3月に、チリ、ラシラの口径3.5メートル新技術望遠鏡(New Technology Telescope;NTT)により、トラペジウム星団の高感度近赤外光観測をおこないました。観測はすばらしい大気条件に恵まれ、そこに褐色わい星と思われる星が100個以上確認されました。そして、その半数以上が、通常の褐色わい星に比べて、かなり明るく観測されたのです。なぜ明るいのか。これは、これらの天体を取り巻いているダストの円盤があり、その高温のダストが余分の光を放射していると考えるのがもっとも無理のない説明です。こうして、褐色わい星の周りにダストの円盤があると推定されたのです。
明る過ぎるという事実だけで円盤が存在するといえるのでしょうか。この推定に疑問を感じる方もあるかもしれません。しかし、それに代わる妥当な説明がなければ、もっとも可能性の高い説明を受け入れなければならないでしょう。ダストの円盤が存在する恒星であると最初に確認された「がか座ベータ星」も、用いた波長は多少長いものでしたが、まったく同じ手順で発見され、その後さらに詳しい観測で確認されたのです。もちろん、今回のダスト円盤存在の推定も、より精密な今後の観測で確認されることが望まれます。
褐色わい星は、質量が太陽の7パーセント以下、1.3パーセント以上の天体です。そしてこれが、「恒星になり損なった星」であるのか、それとも「巨大惑星」であるのかと議論されています。この区別はその起源にあるといえましょう。希薄なガスから直接に凝縮したものであれば「恒星」に近く、原始星の周りの原始惑星系円盤から生まれたのであれば、「惑星」に近いといえます。今 回、ダストの円盤をもつという事実から、これらの褐色惑星は、質量不足で恒星になれなかった星という説明がより適当と考えられます。
上記の発見は、カリフォルニア州パサデナで開催されたアメリカ天文学会講演会で、6月7日に報告されました。
2001年6月14日 国立天文台・広報普及室