【転載】国立天文台・天文ニュース(434)
太陽系最外縁部にあるエッジワース・カイパーベルト天体のひとつ、2000 CR105は、直径がおよそ400キロメートルもある氷の天体と推定されています。おそらく、原始太陽系の時代からずっと生き残ってきた天体でしょう。その軌道が非常に大きく、力学的にいくつかの謎を生み出しています。
2000 CR105は2000年2月に発見されました。その最大の特徴は、軌道が大きいことで、軌道長半径が228.4天文単位もあり、1公転に3452年もかかります。いまのところこれは、太陽を公転する天体でもっとも公転周期が長いものです。それだけでなく、離心率が0.807もあり、長く伸びた楕円軌道をしています。この軌道からみると、2000 CR105は巨大彗星と考えることもできます。その遠日点距離は388天文単位、太陽から海王星までの距離の13倍もあります。近日点距離も44天文単位で、海王星軌道よりはるかに外側です。
カイパーベルト天体に長く伸びた軌道をもつものは他にもいくつかあり、それらは、多分海王星の重力によって軌道が散乱させられたものと思われています。しかし、その場合には、天体の近日点は海王星軌道の内側になるはずですから、この考え方で2000 CR105の軌道を説明することはできません。
では、2000 CR105はどうして現在の軌道をとるようになったのでしょうか。確実なことはわかっていません。たとえば海王星から周期的に強い力を受ける共鳴軌道に入ったことによるのかもしれません。
最近、フランス、コート・ダジュール天文台のグラッドマン(Gladman,B.)たちが雑誌イカルスに投稿した論文では、太陽から100天文単位くらい離れたところに、火星程度の大きさをもつの未発見の惑星があり、その重力による摂動を受けて、2000 CR105がいまのような軌道になったという仮説を述べています。ただし、この天体は火星と違って成分が氷で、いまでも存在しているというのです。ちょっと奇抜な考えですか、それが本当かどうか、いまのところその確実な証拠はどこにもありません。
軌道にこのような謎を秘めたカイパーベルト天体の2000 CR105は、いまは黄道に近い「かに座」います。地球からの距離は53.3天文単位、明るさは23.8等です。かなり大きい望遠鏡でないと観測はできません。
2001年4月26日 国立天文台・広報普及室