【転載】国立天文台・天文ニュース(429)
2001年の復活祭(イースター)は4月15日です。復活祭は、はりつけの3日後にキリストが復活したことを祝うキリスト教徒の最大の祝日です。その他のキリスト教の祭日は復活祭の日付と相対的に決めるものも多く、復活祭の日付は、キリスト教徒にとって重要な意味をもつものです。ここでは、その日付の決め方だけを取り上げます。
日本ではほとんど固定した日付に祝日があり、移動祝日という概念が希薄です。そのため、「春分の日が20日だったり21日だったりするのは困る」と考える人が多いようです。2000年からは成人の日、体育の日がそれぞれ1月、10月の第2月曜となり、これらも移動祝日になりました。しかし、この場合、日付の決定は容易です。世界的に見ると、祝祭日が年によって移動する例はたくさんあります。特に、月の朔望を基準にした暦を使っている人々は、たとえその中で日付が固定していたとしても、太陽暦を使っている人からは、その日付は毎年変わっているように見えます。旧正月の日付が毎年変わるのはその一例です。
復活祭は、早いときには3月22日、遅いときには4月25日になり、年によってその日付はこの間を大きく変わります。そのため、復活祭が何日になるかは、古くから、キリスト教徒の大きな関心を呼びました。中世以来、復活祭の日付を決めるためにさまざまな苦労が続けられた歴史があるのです。
通常いわれている復活祭の日の定義は「春分後の最初の満月の日に続く最初の日曜日」というものです。その満月の日が日曜のときは、復活祭はつぎの日曜になります。2001年は3月20日が春分で、続く満月が4月8日の日曜、したがって4月15日が復活祭というわけです。
しかし、上記の定義は真に正確なものではありません。それは、満月の日を特殊な教会暦(ecclesiastical calender)によって計算するため、その日が天文学の満月の日と一致するとは限らないからです。教会暦は、その新月が真の新月と大きくずれることなく調整されて、約570万年周期で繰り返しになる奇妙な暦です。その暦で計算した教会新月の日を1日とし、その14日を教会満月の日にすることが定められています。
現在はこの方式による計算法が確立していますから、何年先でも復活祭の日付は計算できます。たとえば2002年は3月31日、2003年は4月20日です。
2001年4月5日 国立天文台・広報普及室