【転載】国立天文台・天文ニュース(428)
白色わい星は銀河系内の暗黒物質の少なくとも3パーセントを占めている。銀河ハロー内を運動している暗い低温の白色わい星の調査から、このような結果が得られています。
銀河系にも、他の銀河にも、たくさんの恒星が存在しています。しかし、銀河円盤内の星が銀河中心を回る回転速度の観測結果から銀河系の全質量を推定しますと、恒星の占める質量はその10パーセント程度に過ぎません。銀河の質量の残り約90パーセントは光では見ることのできない暗黒物質によると考えられています。しかし、その暗黒物質がどんな形で存在しているのか、はっきりわかってはいません。ブラックホール、褐色わい星、星間ガス、ニュートリノなど、さまざまな可能性が考えられます。冷えて暗くなった白色わい星も暗黒物質の候補のひとつで、それがどのくらい存在するかも問題になっていました。しかし、これまでの観測では、なかなかこの種の白色わい星を見つけることができませんでした。
カリフォルニア大学バークレー校のオッペンハイマー(Oppenheimer,B.R.)たちは、これは、探し方が間違っていたためと考えました。これまで白色わい星は温度が下がるとしだいに赤くなると考えられていたのですが、そこに問題があったのです。温度が4500度以下になると白色わい星の大気内に水素分子が生じます。水素分子は赤い光を吸収して、より波長の短い青い光を放射するようになります。したがって、白色わい星を探すなら、もっと青い星を目標にしなければならないのです。
この立場から、南銀極周辺で全天の12パーセントをカバーする200枚にも及ぶ過去のデジタル画像をスキャンし直して、オッペンハイマーたちは、そこに126個の白色わい星の候補天体を探し出しました。それらに対し、セロ・トロロ、インターアメリカン天文台の4メートル望遠鏡によって青色スペクトルによる4夜の追跡観測をおこなった結果、銀河ハロー内を高速で移動している38個の白色わい星を探し出すことに成功したのです。その存在密度から考えて、このような低温の白色わい星は、全銀河系の暗黒物質の少なくとも3パーセントを占めることが推定されました。暗黒物質の一部はこれで説明をすることができました。ただし、これはまだ中間的な結果です。最終的に暗黒物質の何パーセントになるか、白色わい星の調査はさらに続けられるということです。
一方、暗黒物質の多くは、まだ正体がはっきりしていません。その他の暗黒物質が何であるかを探ることも、今後の大きな課題です。
2001年4月5日 国立天文台・広報普及室