【転載】国立天文台・天文ニュース(423)

短波標準電波報時JJYの廃止


 すでにご存じの方も多いでしょうが、時刻を知る手段として天文観測で親しまれていた短波の無線報時JJYが、この3月末で廃止されます。

 現在、短波のJJY報時の電波は、総務省通信総合研究所により、5、8、10MHzの周波数で、茨城県三和町の名崎送信所から24時間連続で発射されています(毎時35〜39分は停止)。JJYは時刻を知るためにも、また周波数の基準としても便利で,精度のよいものです。天文観測に際して、短波ラジオを通じて、変調されたピーピーという音や、あるいはJJYのアナウンスを聞かれた方も多いのではないでしょうか。

 ところで、1999年6月10日に、福島県大鷹鳥谷山(おおたかどややま)から、40kHzの周波数で、長波の標準電波JJYが発射されるようになりました。これは、短波のJJYには、外国の標準電波との混信があったり、伝播の悪いところがあったりと、種々の問題が生じてきたからです。この長波JJYの発射にともない、これまでの短波のJJYは廃止されることが決まりました。そして、短波のJJYは2001年3月31日正午(日本時)で停止されます。これまで、短波のJJYを利用されていた方には不便になるかもしれません。今後、正確な時刻を得るためには、この長波のJJYを利用するか、あるいはGPS、ロランCなどを使わなければならないでしょう。

 ここで、簡単に短波JJYの歴史を振り返ってみます。短波のJJYは1948年8月1日に、千葉県の検見川(けみがわ)送信所から、周波数4、8MHzの二波により、出力2kWで送信が開始されました。4MHzは昼夜連続、8MHzは時間を限っての送信でした。報時形式は現在とは異なる形でした。翌1949年に、送信所は東京の小金井に移されました。

 その後、1954年に2.5、5、10MHzによる送信が追加され、1955年にはさらに15MHzも加えられました。1957年に4、8MHzの送信が廃止されています。その間に報時形式は変更されました。1975年にはさらに8MHzの送信が追加され、1978年に送信所は小金井から現在の名崎送信所に移転しています。1996年4月からは、2.5、15MHzの送信が中止され、以来5、8、10MHzだけによる現在の送信形態になりました。

 こうして、短波JJYは、52年8ヶ月にわたって続けられましたが、その歴史もあと2週間余りで閉じられます。これまでJJYを利用したことのある方は、名残りを惜しんで、その放送をもう一度聞かれてみたらいかがでしょうか。

参照

2001年3月15日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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