【転載】国立天文台・天文ニュース(418)
2月22日の今日は、金星が最大光度になる日です。今回はマイナス4.6等の明 るさに達します。宵の明星として夕方の西空にすばらしい明るさで輝く金星は、 夕空を眺めるどなたにも、たやすく目につくに違いありません。
金星の最大光度とはいいますが、その前後1週間くらいを観察しても、その明 るさの変化は僅かで、もっとも明るい日を観測から決めるのは容易ではありま せん。最大光度はどうして決めているのでしょうか。
倍率を上げて望遠鏡で観察すれば、金星には満ち欠けのあることがすぐにわ かります。そこで、金星の明るさはその光っている部分の面積に比例すると仮 定します(この仮定が正しいかどうかは別問題です。たとえば月では、半月の明 るさは満月の1割程度しかなく、面積に比例していないことは明らかです。ただ し、金星では、これほど極端に違うことはないようです)。また、ある点から出 た光は、距離の2乗に反比例して暗くなりますから、肉眼でもこのような条件で 考えますと、金星の明るさは、
(r +Δ+ R)(r +Δ−R)/(rΔ)^3
に比例して変わることを比較的容易に導くことができます。()^3
は()
内の3乗を
意味します。ただしr
は金星の日心距離、R
は地球の日心距離、Δ
は地球と金星
の距離です。この数値を計算して、それが極大になった日時を金星の最大光度
の時刻とするのです。場合によって多少異なりますが、金星の太陽からの離角
が39度付近になったとき最大光度になります。
今回最大光度になるのは、2月22日10時(日本時)です。この時刻は昼間ですか ら、もっとも明るい金星を見たいなら、前日の夕刻にご覧になればいいわけで す。もっとも、いまとなっては手遅れですが。22日には金星は8時ころに東の地 平線から昇りますから、東の空を注意深く探せば、肉眼でも、最大光度の時刻 にその姿を発見できたはずです。この日でなくても、ここ当分は昼間でも見え るでしょう。一度昼間に見ておくと、数日後のほぼ同じ時刻ににまたそれを見 つけるのは、それほど難しいことではありません。
このあと金星は見かけ上急速に太陽に近付き、観測が困難になります。3月30 日が内合で、その後間もなく、今度は明けの明星として、夜明け前の東の空に 明るく輝くようになります。そして、5月5日には再び最大光度に達します。そ のときの明るさはマイナス4.5等です。さらにそのつぎに最大光度になるのは、 2002年の秋でしょう。
2001年2月22日 国立天文台・広報普及室