【転載】国立天文台・天文ニュース(412)

大質量の系外惑星


 木星質量の17倍に達する大質量の系外惑星が発見されました。この天体は、 質量からいうと惑星というよりも褐色わい星であり、惑星と褐色わい星をつな ぐ存在としても、また、この種の惑星系が形成される過程の点からも、興味を 呼んでいます。

 ひとつの恒星が2個以上の惑星をもつ系外惑星系はすでに5組ほど発見され、 その惑星配置がどのようにして生じたかが問題になっています。太陽系の惑星 から想像される配置とは大きく違っているからです。3個の惑星をもつ「アンド ロメダ座ウプシロン星」については、一昨年の天文ニュース(252)でお知らせし ました。今回の惑星は、2001年1月7日から11日にかけてサンディエゴで開催さ れたアメリカ天文学会講演会で、カリフォルニア大学のマーシー(Marcy,G.)と カーネギー研究所のバトラ(Butler,P.)ーが報告したものです。その発表により ますと、「へび座」の7等星HD168443には、それぞれ木星の17.1倍および7.2倍 の質量をもつ二つの惑星があり、前者は長半径2.87天文単位、離心率0.2の軌道 で5.85年の周期で公転、後者は長半径0.29天文単位、離心率0.54の軌道で57.9 日の周期で公転しているということです。この大きい方の惑星は、惑星という よりも、恒星になり損ねた褐色わい星の質量をもっています。つまり、中心の 恒星の周りを公転しているという点からは惑星であり、質量の点からは理論的 には褐色わい星なのです(木星質量の13倍程度が惑星と褐色わい星の境界といわ れています)。しかし、その質量はこれまでに発見されている褐色わい星と惑星 とのちょうど中間にあるため、両者をつなぐものであるかどうか議論になって います。なお、HD168443は123光年の距離にあり、スペクトルがG5型の太陽に似 た星です。またHDとは1918-1924年にハーバード大学から出版された分光カタロ グであるヘンリー・ドレーパー星表(The Henry Draper Catalogue)のことで、 そのカタログ番号で星を表しているのです。

 ところで、このような惑星系はどのようなプロセスで生まれたものでしょう か。惑星と恒星とが通常の連星系として誕生したとしては、両者の質量差があ りすぎます。通常考えられている氷や岩石の核に周囲のガスが集積して惑星が 誕生するプロセスでは、HD168443の原子惑星系円盤の存在時間(数100万年)に必 要な質量を集めることができるか疑問があります。円盤に不安定が生じて惑星 ができるという考え方がいいのかもしれません。大質量の巨大惑星は、いろい ろの点から天文学者の興味と関心を集めています。

参照

  • Boss,A.P. Nature 409,p.462-463(2001).
    http://cfa-www.harvard.edu/planets/
  • 2001年2月1日 国立天文台・広報普及室


    転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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