【転載】国立天文台・天文ニュース(409)

若い星のダスト円盤中に多量の水素


 比較的太陽の近くにある3個の若い星で、そのダスト円盤内に相当量の水素 分子の存在が検出されました。これは、木星型のガス惑星形成理論にさまざま な影響を与えると思われます。

 観測された星は、がか座ベータ星、くじら座49番星、おおかみ座のHD135344 の3個です。これらはいずれも2000万年より若い星で、周囲にダスト円盤の存 在が知られていました。しかし、これまでは、ダスト円盤中にガスはほとんど ないと考えられていました。ただしこれは、水素よりもずっと観測しやすい一 酸化炭素の観測に基づくもので、、いわば間接的な推定でした。

 オランダ、ライデン天文台のティ(Thi,W.F.)たちのグループは、赤外宇宙天 文台(Infrared Space Observatory;ISO)の短波長分光器(Short Wavelength Spectrometer;SWS)を使って水素分子の回転遷移を直接に観測し、3星のどの円 盤も相当量の水素分子を含んでいることを確認しました。その量は一酸化炭素 から推定されていた量の数100倍に上り、特にHD135344は、ほぼ木星一個分の 水素ガスを保持していました。これは、一酸化炭素による推定が誤りであった ことを示すもので、ダストに対するガスの量の比はほぼ100でした。これは、 一般的な星間物質におけるガス-ダスト比とほぼ同じ値です。

 これまでの理論では、巨大ガス惑星は、恒星を取り巻く原始惑星系円盤に十 分なガスが存在するうちにガスをかき集めて成長する必要があり、数100万年 という比較的短時間で形成されるという考え方が主流でした。しかし、今回の 発見から、ガス惑星の形成に、たとえば1000万年から2000万年程度の時間をか けることもありうると考えられます。

 こうした事実から考えると、巨大ガス惑星が生まれるために何か特別の条件 が必要というわけではなく、太陽と似たような質量で孤立している星の周辺に は、かなり一般的にガス惑星が存在すると考えてもいいようです。1995年以降、 たくさんの系外惑星が発見されています。発見されたものは、ほとんどが木星 かそれ以上の質量をもつ巨大惑星です。これはもちろん、大質量の惑星でなけ れば発見できない現在の検出方法の影響によるものですが、巨大ガス惑星がか なり一般的な存在であることを示すものということもできます。

しかし、これら系外惑星の軌道は太陽系の惑星と大きく異なっていて、まだ解 決されていない多くの問題点を含んでいます。

参照

2001年1月18日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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