【転載】国立天文台・天文ニュース(406)
冥王星とその衛星カロン、さらにその外側に分布するカイパーベルトの氷の 天体を探る惑星探査計画はいったん延期が決定されましたが、このミッション に復活の可能性が出てきました。
冥王星は、探査機による接近観測のおこなわれていないただひとつの惑星で す。この冥王星の大気を観測し、また、それより遠いカイパーベルト天体を観 測する計画の「冥王星-カイパーベルト急行(Pluto-Kuiper Express;PKE)」は、 探査機を2004年に打ち上げ、2012年に冥王星に到達する予定で進行していまし た。しかし、惑星探査全体のコストが増加し、負担しきれないということで、 NASAは2000年9月12日にPKEの計画延期を発表しました。
この延期に対して、惑星科学者を中心に、大きな反対の声があがりました。 反対の理由には、「木星によるフライバイを利用して探査機に大きい加速を与 える計画が、延期によって不可能になる。その間に冥王星は太陽から遠ざかり、 2020年までにその薄い大気は凍結して、大気観測が不可能になる。再び溶ける までには200年待たなければならない」といった切実なものもありました。
そこでNASAは、観測内容および、冥王星探査や探査機製作に関する提案を外 部組織から受け入れ、それを競争させることで、探査機製作のコストを下げ、 迅速に作り上げる可能性を探ることにしました。この非常手段でなんとかPKEを 復活させようというのです。これに関係する提案を2001年3月19日まで受け付け るとNASAは表明しています。さらに外部惑星探査に関しさまざまな議論をおこ なうため、内部、外部の科学者、技術者に参加してもらって、きたる2月に2日 半のワークショップを開催するということです。
いまのところ、冥王星探査計画が確実に復活したというわけではありません。 単に、復活への筋道を探っている段階といってもいいでしょう。これまでNASA は、冥王星探査機の開発をすべてジェット推進研究所に委託していました。外 部のアイデアを取り入れることに考えを切り替えたことで、そこになにがしか の希望を感じさせます。
2000年12月28日 国立天文台・広報普及室