【転載】国立天文台・天文ニュース(404)
直径50メートルほどの小惑星が、12月22日に地球のすぐ近くを通過します。 しかし、地球に衝突するおそれはまったくありません。
ローエル天文台、ロネオス(the Lowell Observatory Near-Earth Object Search; LONEOS)チームは、口径0.59メートルのロネオス・シュミットカメラに より、17.5等の明るさの小惑星を12月16日に発見しました。この小惑星には 2000 YAという認識符号が付けられています。その後の観測によって軌道が決定 された結果、この2000 YAは、12月22日6時40分(世界時)ころ、地球からわずか 0.0049天文単位(73万キロメートル)のところを通過することがわかりました。 この距離は、太陽系の中では確かに非常に近いものですが、それでも月の距離 の2倍程度はあり、衝突とはほど遠い距離です。地球に対する最接近の位置は、 およそ東経170度、北緯40度の日本の東方の太平洋上で、北東から南西に向けて 通過します。最接近時には15等ぐらいの明るさになると推定されます。なお、 この小惑星は、離心率0.652のかなりつぶれた楕円軌道で、3.68年の周期で太陽 を回っています。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のビンゼル(Binzel,R.P.)たちがパロマー山 の5メートル望遠鏡を使って12月17日おこなったスペクトル観測によりますと、 2000 YAはS型の小惑星で、絶対等級23.7等、反射能0.2、直径50メートルと推定 されるそうです。
これまでに知られている中で、もっとも地球の近くを通過した小惑星は、 1994 XM1の符号をもつ直径10メートルほどのもので、1994年12月9日に地球から 約0.0007天文単位(10万キロメートル)のところを通過しています。最近では、 今年の5月6日に、2000 SG344の符号をもつ小惑星が、地球から約0.0038天文単 位(57万キロメートル)のところを通過しました。これらと比較すればは2000 YA は接近といってもまだかなり遠く、接近距離では知られている中で12番目くら いになります。もちろん、気付かれずにもっと近くを通過したものは、これま でにたくさんあったに違いありません。現在は各国が地球接近天体を精力的に 捜索していますから、さらに地球に近付く天体もいつかは発見されるに違いあ りません。
2000年12月21日 国立天文台・広報普及室