【転載】国立天文台・天文ニュース(394)

ガンマ線バーストのシュープラノバ・モデル


 ガンマ線バーストの機構としてこれまでにいくつかの説が提案されて いますが、最近のガンマ線バーストでX線スペクトルから鉄が検出された ことにより、考え方に変革がせまられています。

 ガンマ線バーストとは、突然強いガンマ線の放射が天空の一角に起こ り、短時間で終息する現象です。ほぼ1日に1回くらいの割合で観測され る非常に遠いところの大爆発で、太陽が100億年かけて生み出す量のエネ ルギーをたったの1秒で放出するという、ほんとうに想像を絶した現象で す。この爆発の機構として普通に考えられているのはハイパーノバ (hypernova,極超新星)説で、超大質量の星が崩壊してブラックホールに なるときの爆発がガンマ線バーストになるというものです。支持者は少 ないものの、二つの中性子星が衝突してガンマ線バーストを起こすとい う説もあります。

 ところが1999年7月5日6および12月16日のガンマ線バーストで、爆発 余光のX線スペクトルから、多量の鉄が検出されたという報告がありまし た。一般に鉄は恒星の内部で核反応によって作り出され、超新星爆発で 宇宙空間にばらまかれると思われています。今回検出された鉄は、バー ストの際、爆発中心から数100万キロメートルも離れたところに存在した と考えられ、これはハイパーノバ説では説明できません。そこで、爆発 が二段階で起こるというシュープラノバ(Supranova)モデルが浮上しまし た。

 この説では、高速で回転する大質量星が通常の超新星爆発を起こして 鉄などを放出し、後に高速で回転する中性子星が残ると考えます。その 後数ヶ月から数年後に、磁場などの影響で回転速度の落ちた結果、中性 子星が崩壊してブラックホールになる。このときの崩壊が大量のエネル ギーを放出するガンマ線バーストだというのです。しかし、この説はま だ思いつき程度のもので、厳密な理論的検証を経たものではなく、賛否 まちまちです。

 いずれにせよ、鉄が検出されたことで、ガンマ線バースト機構につい て見直しが迫られているのは確かなようです。

参照

2000年11月16日 国立天文台・広報普及室

お知らせ:つぎの木曜日の11月23日は国民の祝日に当たりますので、
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転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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