【転載】国立天文台・天文ニュース(391)
日本スペースガード協会は、地球に接近する天体としてはサイズの大き い小惑星を発見しました。しかし、いまのところ衝突のおそれはまったく ありません。
日本スペースガード協会が岡山県美星町に設置している美星スペースガー ドセンターは、地球接近天体の観測中に、CCDを装着した口径50センチメー トルの反射望遠鏡による観測で、10月22日5時過ぎ(日本時)、「おおぐま座 シータ星」の近くに移動しつつある16.7等の天体を発見しました。この報 告にもとづいて各地で確認観測をおこなった結果、求められた軌道から、 この天体は地球軌道の内側まで入り込むアポロ型の小惑星であることがわ かりました。そして2000 UV13の認識符号が与えられました。この小惑星の 軌道要素はつぎのとおりで、4.16年周期で太陽の周りを公転する天体です。
元 期 2000 Oct. 23.0 TT 元期平均黄経 334゜.16718 近日点引数 195゜.59902 長 半 径 2.5883223 AU 昇交点黄経 348゜.50824 (2000.0) 離 心 率 0.6408173 軌道傾斜角 32゜.01235
2000 UV13は絶対等級が13.5等と見積もられ、この明るさから、直径は 5ないし12キロメートルと推定されます。これは1000個余り発見されてい るアポロ型小惑星の中では2番目の大きさです。これだけの大きさのもの が未発見であることはこれまで想像されていませんでした。この発見は、 日本スペースガード協会のお手柄といえましょう。なお、アポロ型小惑星 で最大のものは、1972年に発見された小惑星(1866)シジファス(Sisyphus) で、絶対等級が13.0等です。
2000 UV13は2001年1月24日に地球から9700万キロメートルにまで接近し ます。その後も接近を繰り返しますが、空間で軌道が地球と交わっている わけではありませんから、近々衝突する心配はまったくなく、最も近いと ころでも750万キロメートルくらい離れています。しかし、遠い将来の接 近については、より精密に軌道を決めて研究する必要があります。なお、 小惑星の絶対等級とは、太陽からも地球からも1天文単位の距離に小惑星 があるとし、かつ満月のように欠けるところがないと仮定したときの明る さをいいます。
2000年11月2日 国立天文台・広報普及室