【転載】国立天文台・天文ニュース(386)
ヒッパルコス衛星の後を継ぐ形で、天体位置精密測定のためのアストロ メトリー衛星の打ち上げがつぎつぎに計画されています。DIVA計画、ガイ ア(GAIA)計画がそれらに当たります。
1993年にヨーロッパ宇宙機構(ESA)が打ち上げた高精度視差観測衛星ヒッ パルコスは、予定の静止軌道投入に失敗したにもかかわらず大きな成果を 挙げ、これまでにない高精度で100万星以上の恒星の位置、年周視差、固有 運動を測定しました。その成果がヒッパルコス、ティコの二種の星表にま とめられているのは皆さんよくご存知のことでしょう。ESAはこれに続く計 画として、GAIA計画を推し進めています。2012年に打ち上げ予定のGAIAは、 銀河系内だけでなく銀河系外も含め、約10億星の位置などを、ヒッパルコ スの100倍の精度で測定する予定で、非常に野心的な計画です。
これに対し、ドイツ宇宙機構(German Space Agency)は、GAIAに先だって、 やはりアストロメトリーのためのDIVA(German Interferometry for Multichannel Photometry and Astrometry)衛星打ち上げの計画を発表しま した。DIVAはちょうどヒッパルコスとGAIAにはさまれる20年間の空白を埋 める形で、やはり銀河系内外の3500万星を、ヒッパルコスの5倍の精度で測 定しようという計画です。衛星打ち上げ予定の時期はまだはっきりしませ んが、ここ数年のうちと思われます。このDIVA計画は、ドイツX線衛星 ABRIXASIIや、ガンマ線観測衛星MEGA(Medium-Energy Gamma Ray Astronomy) を押さえて、トップの重要度にランクされました。位置天文学についての 歴史と伝統を誇るドイツ宇宙機構が、いかにこの計画を重要視しているか がわかります。この計画にはほぼ1億ドイツマルク(4500万ドル相当)の経費 が見込まれています。
高精度の位置観測は、単に恒星の位置を高精度に知るだけにとどまらず、 ハッブル定数の決定に、また暗黒物質量を推定して銀河系の質量を正確に 知る上にと、天文学全体に大きな意味をもつものです。そうした点からも、 天文学関係者はこれらDIVA計画、GAIA計画の進展を、期待をもって見まも ることになるでしょう。
2000年10月19日 国立天文台・広報普及室