【転載】国立天文台・天文ニュース(385)
月末の10月31日、小惑星トータチスが地球に接近します。
小惑星(4179)トータチスは、以前に地球に衝突するなどと騒がれたこともありましたが、もちろんそんなことはありませんでした。このところ、ほぼ4年に1回の割合でやや地球に接近します。接近といってもたいしたものではなく、衝突とは程遠いものです。今回の最接近は10月31日で、最接近距離が0.074天文単位、1105万キロメートルです。これは、ざっと月の距離の30倍くらいに当たります。
本日10月12日にはトータチスは「いて座」にあり、地球からの距離は0.131天文単位、日暮れ直後の南西の空に10.8等の明るさで見えているはずです。はっきりした位置を知っていれば、望遠鏡で見ることもできるでしょう。その後は日に日に西へ大きく移動し、距離が近付き、9.5等くらいにまで明るくなります。最接近の日には「てんびん座」にまで移動しますが、見かけ上太陽近くに来ますから、残念ながらこのときの観測は不可能です。以後遠ざかるにつれて、明け方の空に見えるようになります。
トータチスの4年後の接近は2004年の9月29日で、このときは今回の7分の1の155万キロメートルにまで近付きます。これはかなり近い接近といえます。そのあとの2008年、2012年は、今回よりは近くにきますが、いずれも最接近距離が700万キロメートル程度のものです。
これまでに発見されている小惑星には、軌道が確定し番号が付けられているものがおよそ1万5000個あり、その他にまだ番号が付けられていないものがあります。この両方を含めて約3万7000個の小惑星を調査しますと、地球から0.1天文単位(1500万キロメートル)以内に近付く小惑星が毎年4個から8個くらいあります。今年は4月26日に1937 UBという符号の小惑星が183万キロメートルに近付き、また8月14日に(4486)ミスラが696万キロメートルにまで近付いています。また、今後20年間にもっとも接近するものを探しますと、2008年4月8日に1994 GVという符号の小惑星が79万キロメートルにまで接近します。それでも、これは月の距離のざっと2倍あり、衝突の心配はぜんぜんありません。
2000年10月12日 国立天文台・広報普及室