【転載】国立天文台・天文ニュース(384)
親となる恒星のない、独立の惑星の一団が発見されました。
太陽系の惑星はすべて太陽の周りを回っています。最近つぎつぎに発見されている系外惑星も恒星の周りを回っているという前提で、その恒星運動のふらつきから探されているのです。恒星の周りにできた降着円盤から惑星が誕生するというのがこれまでの考え方でした。今回の発見は、このような理論に正面から対立するものです。
ガスが集まって天体になるとき、太陽質量の8パーセント以上の質量があれば、中心で水素の核反応が始まり恒星になります。8パーセント以下で1.3パーセント以上のときは、一時的に光りはするものの結局は恒星になれず褐色わい星となります。それ以下のときは自分で光を放つことのできない惑星になるというのが、質量による大略の分類です。
スペイン・アメリカ・ドイツの共同観測チームは、オリオン座の方向の1200光年離れたところに、木星の10倍程度の質量で、2000度という低温の、現在収縮中とみられる18個のガス球を発見しました。質量の点からそれを惑星と呼ぶことにすれば、それらの惑星はいずれも公転している中心の恒星がなく、いうならば孤立したの惑星です。相互に回り合っているわけでもなく、全体でぼんやりとまとまって、一方向に流れている状況です。
チームリーダーで、カリフォルニア工科大学のザパテロ-オソリオ(Zapatero-Osorio,M.R.)は、「これらの惑星が、褐色わい星のごく小さいものという形で、最初からその大きさで生まれたものかもしれないし、また、恒星の周りで形成されたものが、あとから放出されたのかもしれない」と述べています。また彼女は「いずれ木星、土星のように見えるはずだ」とも述べています。近くにある恒星は生まれてまだ100万年から500万年しか経っていない若い星ですから、この惑星も同程度には若いと思われます。
集中して観測したのはほんの狭い領域だけですから、このような惑星状の天体はまだまだたくさんあることが推測されます。ただ、この種の天体はたいへん暗いので、発見は容易ではありません。可視光の明るさだけでは不十分なので、今回の検出には、赤外を含めて観測できる分光器を使ったということです。十分に暗い天体まで観測できるものとすれば、このような惑星は、もしかすると、星形成領域ではありふれた存在なのかもしれません。
2000年10月12日 国立天文台・広報普及室