【転載】国立天文台・天文ニュース(372)
昨年発見された天王星の3個の新衛星に名前がつけられました。
1999年にコート・ダジュール天文台のグラッドマン(Gladman.B)たちが発見した3個の天王星の衛星は、2000年5月から8月にかけての観測で再確認され、その結果、イギリス、マンチェスターで開催された第24回国際天文学連合の総会で、提案されていた名前が正式に認められました。付けられた名前はつぎのとおりです。
第18衛星 S/1999 U3 プロスペロー(Prospero) 第19衛星 S/1999 U1 セティボス(Setebos) 第20衛星 S/1999 U2 ステファーノ(Stephano)
天王星の衛星は、最近の慣習にしたがって、シェクスピアの戯曲に出てくる名からつけられています。すでに名付けられている第16衛星のキャリバン(Caliban)、第17衛星のシコラックス(Sycorax)とともに、これらはすべてシェクスピアの最後の作品であるテンペスト(あらし)から採った名前です。天文学に関係することではありませんが、ごく簡単に、テンベストの中でのこれらの関係を説明しておきましょう。
プロスペローはミラノの大公ですが、その地位を弟のアントニオに追われ、娘のミランダとともにとある島に流れついています(ミランダの名はすでに第5衛星につけられています)。その島に先だって住んでいたのが、魔女のシコラックスと、その息子である怪物キヤリバンです。プロスペローはキャリバンを教育して召使いにしています。このシコラックスとキャリバンが崇拝している神がセティボスです。
プロスペローが追われて12年後、弟のアントニオやナポリ王を乗せた船が難破し、乗っていた人々はプロスペローの島へ漂着します。そこでの物語がテンペストの中心ですが、ここでは省略します。難破した船で料理番をしていた男がステファーノです。
これまで、天王星の衛星には、デスデモーナ、ジュリエットなど、それぞれの物語で中心となる人物の名が多くつけられていました。しかし、最近はかなりマイナーな名前が選ばれる傾向になっているようです。
参照
2000年8月22日 国立天文台・広報普及室