【転載】国立天文台・天文ニュース(369)
宇宙科学研究所のミューゼスC計画が変更されました。
ミューゼスC計画は、小惑星探査のために企画されたプロジェクトで、日本の宇宙科学研究所の計画にNASAが相乗りする形でおこなわれるものです。小惑星に接近し、その周囲を回って観測を実施、小惑星表面の岩石を採取し地球に持ち帰ることが主目的です。また、小惑星の表面に移動探査車を下ろしてさまざまな観測をおこなう予定もあり、この探査車の製作をNASAが担当しています。
ミューゼスC計画の初期の目標天体は小惑星(4660)ネレウスで、2002年1月にM-5ロケットを使っての打ち上げが計画されていました。しかし、2000年2月、X線観測衛星アストロEを打ち上げようとしたM-5ロケットが失敗、そのため、今後の打ち上げ計画の練り直しが必要になったのです。
今回発表された予定によりますと、M-5ロケットによる打ち上げは2002年12月、目標の小惑星1998 SF36に到着するのが2005年9月です。その小惑星を周回しながら約3ヶ月滞在、その間に移動探査車を下ろして観測を行い、資料となる岩石破片の採取をおこないます。最後に地球に戻るのが2007年6月の予定になっています。
新たに目標になった小惑星1998 SF36は、1998年9月にアメリカのリンカーン研究所が発見した小惑星で、まだ小惑星としての確定番号は与えられていません。1.5年の周期で太陽の回りを周回する小惑星です。近日点距離が0.954天文単位しかなく、地球軌道より内側になる上に、軌道傾斜角が1.7度しかありませんから、将来の地球衝突候補天体のひとつです。発見されてまだ2年ですから、いろいろのことがまだよくわかっていません。2001年3月29日に地球に640万キロメートルにまで接近、また2004年6月25日には209万キロメートル (月の距離の5倍あまり) にまで接近すると見られています。この時期には、地上望遠鏡によって、その大きさ、形、自転の状況、表面の様子などをできるだけ詳細に観測することが計画されています。