【転載】国立天文台・天文ニュース(364)
木星に17番目の衛星が発見されました。
アリゾナ大学では、地球接近小惑星の探索、観測を主目的としてスペースウォッチ・プログラムを実施しています。その観測中に、1999年10月に「おひつじ座」を逆行する20等級の天体が発見されました。そのときは一応小惑星として記録され、1999 UX18の符号がつけられました。
その後の観測を含めてこの1999 UX18の軌道決定をおこなったところ、太陽中心としての軌道がどうしてもうまく合いません。見かけ上木星に近い位置にであったので、そこで始めて木星の衛星ではないかとの疑いがもたれました。木星の衛星として軌道を決め直したところ、こんどは観測と合い、これによって、木星の衛星であることが確認されました。木星に衛星が発見されたのは、1979年にボイジャー1号と2号が、それぞれ第16衛星のメティス、第15衛星アドラステアを発見して以来で、21年ぶりのことになります。国際天文学連合回報によりますと、木星中心の軌道要素はつぎの通りです。
元期 = 2000 Sept. 13.0TT 近木点通過時刻 = 2001 Sept. 4.042TT 近木点黄経 = 53゜.891 離 心 率 = 0.12971 昇交点黄経 = 280゜.375 (2000.0) 近木点距離 = 0.14134 AU 軌道傾斜角 = 143゜.026 長 半 径 = 0.16241 AU 周 期 = 774日
この周期の774日は、これまで木星の衛星として一番周期の長かった第9衛星シノペの758日より少し長く、今回発見された衛星がもっとも外側の衛星になります。明るさから推定されるこの新衛星の直径は5キロメートル程度で、現在大きさがわかっている太陽系の衛星では最小と思われます(これまでの最小は木星の第13衛星レダの直径10キロメートル)。
現在木星は「おうし座」にあり、夜明け前の東の空に見ることができます。この第17衛星は木星のわずか南にありますが、20等という暗い天体ですから、通常の望遠鏡で観測するのはちょっと困難と思われます。
2000年7月27日 国立天文台・広報普及室